最新記事

日本経済

日本株に「悪い円安」は未発生、ドル高止まる時が危険

2022年5月6日(金)12時19分
ドルと円の紙幣

足元で進む円安と日本株の相関性は、今のところはっきりしない。(2021年 ロイター/Shohei Miyano)

足元で進む円安と日本株の相関性は、今のところはっきりしない。マーケットでも日本経済に対する円安の功罪について議論が分かれており、株価の材料としてはほぼ中立。日本株全体でみて「悪い円安」が発生している様子はない。相関性が高いのは米株であり、米株が大きく下落することで米利上げ観測が後退しドル高/円安が止まる時が日本株にとって危険な時間帯となりそうだ。

TS倍率は足元上昇

対ドルで円安が急激に進み始めたのは3月から。インフレ高進で米利上げ加速観測が強まり、日米金融政策の方向性の違いが鮮明化。日本の経常収支赤字化(1月)なども材料視され、115円付近だったドル/円は約2カ月で15円以上の円安が進んだ。

その間、日本株は3月後半までは円安・株高の関係になっていたが、4月に入ってからは円安・株安になっており、相関性は逆転している。ドル/円が120円を超えてから円安・株安のトレンドとなっており、この辺から「悪い円安」が発生したとの見方も聞かれるようになった。

しかし、TOPIXをS&P500で割ったTS倍率でみると、足元はむしろ上昇している。水準自体は依然低いものの、4月以降の日本株の対米パフォーマンスは向上。先進国23カ国と新興国23カ国の大型株と中型株を合わせたMSCIのACWI指数との比較でもTOPIXは上昇している。

日本株との関連性が高いのは、ドル/円よりも米国株や世界の株価だ。「市場のリスク選好度、もしくは世界の景況感に連動して日本株は動いている。円安は業種で影響が異なっているが、日本株全体をみれば今のところプラスに働いている」と、ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏は指摘する。

キャピタルフライトは見られず

通貨価値の下落である円安を嫌って、日本の投資家が外国の株式や債券に資金を移している様子も見られない。3月から4月23日までの対内対外証券投資(財務省)では、日本居住者による対外株式・ファンド投資は、約1兆3000億円の処分超(売り越し)。中長期債も約4兆円の処分超だった。

ただ、国内投資家が日本株を選好しているわけではない。現物と先物を合計した日本株売買(東証・大取)では、3月から4月第3週までを累計すると、個人投資家は1374億円の買い越しにとどまっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

ブラックストーンとTPG、診断機器ホロジック買収に

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

タイ、通貨バーツ高で輸出・観光に逆風の恐れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中