最新記事

再生可能エネルギー

燃料の安定供給が危ぶまれる今、期待が集まる「地球にあふれる資源」という解決策

2022年5月10日(火)18時15分
西田嘉孝
H2 KIBOU FIELD

純水素型燃料電池を活用した実証施設「H2 KIBOU FIELD」(パナソニック株式会社)

<持続可能な未来に向けて加速する「脱炭素化」の流れ。日本を含む125カ国と一つの地域が目標に掲げる2050年までのカーボンニュートラルだが、その実現に向けた解決策の1つとして水素を活用した世界初の「RE100」の試みが注目を集めている>

脱炭素社会の実現という目標はもちろん、最近では原油価格の高騰やエネルギーの安定供給に対する懸念の高まりもあり、企業にとって再生可能エネルギーへの移行は、従来以上に喫緊の課題となりつつある。

そうしたなか、企業が自らの事業で使用する電力を100%再エネ(再生可能エネルギー)で賄うことを目指す国際的なイニシアチブである「RE100」への注目が、これまで以上に強まっている。現在はアップルやグーグル、マイクロソフトをはじめ、全世界で300社以上がこの企業連合に加盟し、日本からも69社が参加する。

そんなRE100化の実現に向けた挑戦の例として注目を集めているのが、本格的な水素の活用による工場のRE100化という世界初の試みを行う「H2 KIBOU FIELD」。2022年4月15日、燃料電池工場などがあるパナソニック株式会社の草津拠点にオープンした実証施設だ。

脱炭素化とともにエネルギーの地産地消を目指す

オープンに先駆けた4月14日に実施された記者発表会では、同社の燃料電池・水素事業を統括する加藤正雄氏が、今回の取り組みの背景について説明。脱炭素化に向けて再エネの普及が加速する世界のエネルギー動向を見据え、昨今の自然災害リスクの増大への対策として、地域インフラのレジリエンスを強化する分散型社会への移行などが語られた。

「エネルギーの地産地消を目指し、消費地における『CO2排出ゼロ』の発電所をつくることが、当社の推進するRE100ソリューションの全体像です」と、加藤氏は言う。

「今回の草津燃料電池工場の年間消費電力量は、一般家庭の約900戸分にあたる約2.7GWh。夏冬のピーク電力は約680kWにもなります。「H2 KIBOU FIELD」では、そうした工場のすべての電力を、太陽電池と蓄電池、純水素燃料電池の3電池連携の最適制御によって賄っていきます」

「H2 KIBOU FIELD」に設置されるのは、純水素型燃料電池99台と、1820枚の太陽光パネル。そこに約1.1MWhの余剰電力を蓄えることができるリチウムイオン電池を組み合わせ、約200名のスタッフが働く工場に必要な電力の自給自足を実現させる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀の情報発信、利上げ判断につながる変化 円安を警

ワールド

米感謝祭休暇の航空需要が縮小、政府閉鎖が影響

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

アングル:ケネディ暗殺文書「押収」の舞台裏、国家情
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中