最新記事

自動車

世界最大の自動車市場の中国 EV化進み国内勢が躍進、テスラすら歯が立たず

2022年5月30日(月)11時53分
上海オートショーで展示されたフォルクスワーゲンID. 6 X

世界的自動車メーカーが電気自動車(EV)の時代に入っても中国で支配的地位を保てると考えているとすれば、ショックを味わうことになるかもしれない。写真は上海オートショーで展示されたフォルクスワーゲンID. 6 X。2021年4月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

世界的自動車メーカーが電気自動車(EV)の時代に入っても中国で支配的地位を保てると考えているとすれば、ショックを味わうことになるかもしれない。

内燃機関車時代の「王」だった米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)は今、中国で急拡大するEV市場で国内メーカーに遅れを取っている。

北京の会社員ティアンナ・チェンさん(29)が18万元(2万7000ドル)で小鵬汽車(シャオペン)のクロスオーバー車を買った際に一番悩んだのは、BYD(比亜迪)もしくは上海蔚来汽車(NIO)のEVにすべきかどうか、という点だった。高級な外車ブランドはほとんど検討しなかった。

「もしもガソリン車を買うのであれば、外車を考えたかもしれない。でも私がほしかったのはEVで、テスラを除くと最新のスマートテクノロジーをきちんと装備している外車ブランドはほとんど見当たらなかった」とチェンさんは言う。

約5000億ドルと世界最大の規模を誇る中国の自動車市場。ここでは今、EVの販売が急増している。

首位BYDはテスラの3倍

中国自動車工業協会(CAAM)のデータによると、今年1─4月の新エネルギー車(NEV)販売台数は前年同期の2倍以上に増えて149万台に達した。NEVにはEVとプラグインハイブリッド車(PHV)が含まれる。

ガソリン車需要の急減で中国の自動車販売全体が12%減る中で、乗用車市場全体に占めるNEVの割合は23%に拡大した。

今年のNEV販売台数を見ると、上位10社に入っている外資系メーカーは3位の米テスラのみだ。中国乗用車協会のデータで明らかになった。

残りはすべてBYD、上汽通用五菱汽車(ウーリン)、奇瑞汽車(チェリー)、小鵬汽車など中国ブランドが占めている。首位のBYDは年初からのEV販売台数が約39万台と、テスラの中国販売の3倍だ。

老舗メーカーの中でEV販売台数が最も多いのは、VWと中国第一汽車集団(FAW)のEV合弁会社で、15位にとどまっている。

チェンさんは、「ビュイック ヴェリテ7」にしろVWの「ID.」シリーズにしろ、外車ブランドには自分の求めるもの、つまり車内でスマートフォンのような体験ができる「快適さ」が備わっていないと言う。

「外車ブランドは私の生活、ライフスタイルとかけ離れている」とチェンさん。今乗っている小鵬汽車のEVは、運転手をアシストするデジタル機能を使って決済アプリの「支付宝(アリペイ)」や電子商取引サイトの「淘宝(タオバオ)」に接続することができるほか、「窓の開け閉めから音楽のスイッチオンまで、私に代わって全部やってくれる」。車のソフトウエアも無線で更新される。

自動車業界は逆転が起きた。1990年代以降、中国の自動車市場を支配してきたのは世界的ブランドで、近年は合計で乗用車販売の6―7割を占めるのが普通だった。しかし今年1―4月のシェアは52%、4月単月では43%に縮小している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾総統、新ローマ教皇プレボスト枢機卿に祝辞 中国

ワールド

パナソニックHDが今期中に1万人削減、グループの業

ワールド

インド、パキスタンによる国境全域での攻撃発表 パキ

ビジネス

日経平均は続伸、米英貿易合意や円安を好感 TOPI
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中