最新記事

日本経済

自民党・経済対策提言、ポストコロナ研究で基金10兆円やGoToトラベル延長

2020年11月30日(月)17時26分

自民党は30日、2020年度第3次補正予算や21年度本予算および経済対策に向けた提言をまとめ、菅義偉首相に手渡した。写真は都内で2009年7月撮影(2020年 ロイター)

自民党は30日、2020年度第3次補正予算や21年度本予算および経済対策に向けた提言をまとめ、菅義偉首相に手渡した。菅政権が掲げる温室効果ガス削減を達成するために各種技術開発を支援する基金やポストコロナ時代に向けた研究者支援のための10兆円規模の基金の創設、観光需要喚起策「GoToトラベル」事業の延長、コロナ禍の就職支援策などを求めている。

需要不足「相当規模」、コロナは「世界経済に大きな脅威」

提言は、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けた感染防止策およびコロナ禍による被害が著しい年齢層や産業への対策と、ポストコロナ時代を見据えた環境・デジタル技術の促進による産業競争力強化が柱。与党内では7━9月の日本経済のGDPギャップ(需要不足)が34兆円にのぼることが明らかになり、大型対策への要望が増えているが、提言は対策の全体規模については触れておらず、「現時点でGDPギャップは相当規模が残っており、新型コロナは国民の生命・健康にとっても、わが国のみならず世界経済全体の大きな脅威」としている。

感染防止策としては、来年前半までに全国民に提供可能なワクチンを確保するよう求めている。PCR検査や抗原検査について、必要な検査が確実に受けられる体制の確保を目指すとしている。

足元の感染再拡大を受け、意見が分かれているGoToトラベル事業については、観光業者支援の観点から、感染防止策を講じた上での継続・延長を提唱している。

新卒内定者の急減を反映し、新卒者や3年以内の既卒者を支援し、第2の就職氷河期を作らないよう求めている。

中小企業支援策として、劣後ローンの供給継続や、民間金融機関による実質無利子融資制度の延長を求めている。

ポストコロナ対策としては、2050年の温室効果ガスゼロを実現するため、環境対応技術の開発を支援するファンド設立を要望。次世代太陽電池の開発や洋上風力などの主力電源化、原子力の活用、水素発電などを支援する。製造過程で温室効果ガスを大量に発生する鉄鋼や化学、エネルギー業界で温室効果ガスを削減する取り組みも支援する。

また、先端半導体の製造基盤強化、ポスト5Gの通信技術や人工知能(AI)開発も促進する。ポストコロナに向けたイノベーションを推進するため、若手研究者を支援するため10兆円規模のファンドを設立し、運用益を研究基盤の構築に活用することを提言している。

製造業の中国生産への過度の依存を見直すため、感染防止のために必要な製品や海外依存度高い製品の国内回帰、海外拠点の多元化を進めることも提言している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米株安と円高で ソフトバ

ワールド

エアバス、12月納入低調 年間目標まで100機超

ワールド

仏上院が来年度予算可決、赤字削減「骨抜き」 さらに

ワールド

映画監督殺害で「トランプ錯乱症」と米大統領投稿、超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中