最新記事

アメリカ経済

米民主党の追加経済対策で注目される「バイデントレード」の死角 株高・金利上昇シナリオは万全か

2020年10月12日(月)12時10分

7日の副大統領討論会で、ペンス氏は「バイデン氏は就任初日に増税することになる」と発言。ハリス氏は、バイデン氏は年間所得が40万ドルを下回る人々には増税しないと反論したが、増税自体は否定しなかった。

「バイデントレード」が広がってきたにもかかわらず、金融市場が敏感に反応するのは依然としてトランプ氏の発言や動向だ。中国人民元やメキシコペソなど、トランプ氏が攻撃対象としてきた国の通貨が上昇の気配をみせている。「バイデントレードというよりは脱トランプトレード」(国内証券)との指摘も多い。

最高裁判事の増員問題

「トリプルブルー」観測自体も強固ではない。上院選挙が依然微妙であるほか、最高裁判事の増員問題がバイデン陣営の弱点として浮上してきている。

9月にリベラル派のルース・ギンズバーグ最高裁判事が死去したのを受け、トランプ大統領は保守派バレット連邦高裁判事を指名した。保守派6人・リベラル派3人と保守派優勢の構成になるため、バイデン氏が選挙勝利後にリベラル派の判事を増員すべきだとの声が一部にある。

しかし、この強引な手法には反対論も多い。強硬に進めてしまえば、急進左派を嫌う穏健派層がバイデン氏支援から離脱する可能性がある。バイデン氏自身も昨年時点で消極的な考えを示していた。しかし、保守派優勢の状況ではオバマケアの存続などが危うくなる。

最高裁判事の数は1869年以来、9人から変わっていない。ただ、議会は判事の数を変更する権限がある。バイデン氏は8日、大統領選で勝利すれば自らの立場を明らかにすると述べるにとどめた。

「決まらないことが最大のリスクだった。バイデン氏のリードが広がったことが一番のリスクオン要因。接戦観測が広がれば、リスクオフ圧力は再び強まる」と、アライアンス・バーンスタインの債券運用調査部長、駱正彦氏は指摘する。

ニュージーランドに拠点を置くオンライン予測市場、プレディクトイットによると、9日時点で、バイデン氏勝利の確率は67%。しかし、2016年の米大統領選において、ヒラリー・クリントン候補は同じ時点で約80%ともっと高かった。

(編集:青山敦子)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国当局、エヌビディア H20半導体の使用回避を国

ビジネス

日経平均は最高値、一時1100円超高 米関税や業績

ワールド

豪中銀、全会一致で予想通り利下げ 追加緩和の必要性

ビジネス

英雇用6カ月連続減少、賃金は高い伸びを維持 中銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中