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コロナショックに苦しむ日本の航空業界 夏が行き先占う分岐点

2020年4月6日(月)08時39分

金融市場の警戒感

金融市場の懸念も高まっている。企業の信用力を予想して売買するクレジット・デフォルト・スワップ取引では、ANAの倒産に備えた保証料率(5年物、IHSマークイット)が2月後半から急上昇、一時約1.6%を付けた。感染が中国から欧州へ広がり「世界的な拡大は時間の問題」とみられ始めたタイミングだと野村証券のクレジットアナリスト、荻野和馬氏は話す。

市場全体のリスク回避的な動きや投機的な動きもあり要因の切り分けは難しいが、約1.6%の保証料率は計算上、「5年以内に破綻する可能性が10%程度織り込まれている」(荻野氏)水準を意味する。

JALとANAでは売上高の約9割が費用で、うち約半分が人件費や航空機リース代などの固定費が占める。減便・運休で燃料代などの変動費は抑えられるが、それでも固定費はかかる。

ANAの平常時の国際・国内線収入は月平均で約1000億円。これまでの減便規模からすると1カ月分はすでに「蒸発」し、手元の流動性資金は3000億円程度に減っているもようだ。何も手当てせずこのまま同規模の減収が続けば、フリーキャッシュフローの赤字継続は不可避だ。

手元資金を確保するため、ANAは例年6月に実施する500億円前後の借り換えを4月に前倒しし、複数の民間銀行から計約1000億円、日本政策投資銀行からも約3000億円を調達する方向で協議している。コロナの影響が1年程度続く場合に備え、複数の民間銀行に計約3000億円、政投銀に約1兆円の融資枠も求めている。[nL4N2BR3FZ]

麻生太郎財務相は3日の会見で、航空産業は地域経済や訪日需要を支える「日本経済の屋台骨だ」と語り、民間金融や政府系金融機関で危機対応融資を活用して航空各社の資金繰りに万全を期す方針を示した。

ANA、JALそれぞれの昨年12月末時点での現預金は1268億円、2964億円、有価証券は2632億円、300億円。純有利子負債残高はANAが4581億円、JALが1562億円だが、関係者は「ここ数カ月で状況は様変わりしている」と話す。

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