最新記事

世界経済

米国株式市場ダウ2013ドル安、下げ幅過去最大 原油急落・新型コロナウイルス懸念で

2020年3月10日(火)07時00分

米国株式市場は大幅安。原油相場の急落や新型コロナウイルス感染拡大を巡る懸念からリセッション(景気後退)懸念が台頭し、パニック売りを誘発した。ニューヨーク証券取引所で撮影(2020年 ロイター/BRYAN R SMITH)

米国株式市場は急落。原油相場の大幅な値下がりや新型コロナウイルス感染拡大を巡る懸念からリセッション(景気後退)懸念が台頭し、パニック売りに見舞われた。ダウ平均株価は2000ドル超急落し、過去最大の下げ幅を記録した。

主要株価指数は寄り付きから下げが拡大し、間もなく7%安を付けたところで緊急避難的な取引停止措置である「サーキットブレーカー」が発動、15分間の取引停止となった。同措置は株式相場が大暴落した1987年の「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」以降に導入された。その後はやや下げ渋る場面も見られたものの、取引終盤にかけて再び売りの勢いが増した。結局S&P総合500種指数は2月19日の最高値から約19%安でこの日の取引を終えた。

キーター・グループ(マサチューセッツ州)のマシュー・キーター氏は「歴史的な取引になったことは間違いない。市場は高い確率で景気後退を織り込みつつある」と指摘。またスパルタン・キャピタル・セキュリティーズ(ニューヨーク)の主任市場エコノミスト、ピーター・カルディリョ氏も「市場では恐怖感が高まっている。原油価格の下落が継続すれば世界経済はそれほど遠くない将来に景気後退入りする可能性がある」とした上で、相場がパニックモードに入ったことで、米連邦準備理事会(FRB)が救済に動く可能性もあると述べた。

株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は上昇し、金融危機に見舞われた2008年12月以来の高水準を付けた。こうした中、米国債利回りは一段と低下し、10年債利回りは0.318%と過去最低を更新した。

9日の原油先物相場は激しい売りに見舞われ、下げ幅は一時30%を超え1991年の湾岸戦争以降で最大を記録した。石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」の協調減産体制が崩壊する中、サウジアラビアとロシアによる石油価格戦争の勃発で原油安ショックが広がった。

関係筋によると、サウジは原油生産量を過去数カ月の日量970万バレルから同1000万バレル超に引き上げる方針。こうした中、ロシアも生産量を引き上げる可能性があり、6ー10年は原油安に耐え得ると表明した。

業種別ではエネルギー株や金融株の下げが目立った。個別銘柄ではアップルが7.9%安。中国でのiPhone出荷台数が2月は50万台を下回ったことが、中国信息通信研究院(CAICT)のデータから9日明らかになった。アップルは同月、新型ウイルス感染拡大を受け、中国本土にある店舗とオフィスを少なくとも2週間閉鎖した。

フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は8.3%安と08年10月以来の大幅な下げを記録した。

ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を17.86対1の比率で上回った。ナスダックでは19.11対1で値下がり銘柄数が多かった。

米取引所の合算出来高は172億2000万株と、直近20営業日の平均110億5000万株を大幅に上回った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ上振れも、想定より金利高く維持する可能性

ビジネス

ソフトバンクG、1―3月期純利益5171億円 通期

ビジネス

独ZEW景気期待指数、5月はプラス転換 予想も上回

ビジネス

ホンダ社長、日産との統合協議再開「当分もうない」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 7
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中