中国の春節を直撃した新型肺炎、航空業界への打撃は?

中国武漢市で発生して感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、航空会社や搭乗客は警戒感を募らせている。写真は武漢の空港で、航空便のキャンセル情報を確認する男性(2020年 ロイター/cnsphoto)
中国武漢市で発生して感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、航空会社や搭乗客は警戒感を募らせている。足元までの航空業界による対応状況や、2003年に800人近くが死亡した重症急性呼吸器症候群(SARS)と比較して業界が受ける可能性がある金銭的な被害をまとめた。
予想される航空業界への金銭的被害
最大の懸念は、新型コロナウイルスによる肺炎が世界的に流行した場合に予想される旅行需要の急激な落ち込みだ。SARSが最も深刻化した03年4月には、国際航空運送協会(IATA)によるとアジアで航空機利用需要が45%減少した。キャセイパシフィック航空が40%近くの便を欠航して赤字を計上したほか、シンガポール航空、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)なども同様の事態に陥った。
そして航空業界は足元で、中国旅行客への依存が高まっている。
例えばオーストラリアでは、国際便での中国人搭乗客の比率は03年時点の4%から15%強に上がったことが、ムーディーズのデータで分かる。これらの搭乗客のほとんどは中国本土の航空会社を利用してオーストラリアに到着した後、オーストラリアの航空会社機に乗り換えて各地に向かうので、中国の旅行需要が減少すればカンタス航空などにたちまち影響する。
03年以降で年間の旅客便利用者数は2倍以上に増加しているが、なかでも中国から海外への渡航増大で、中国が海外旅行で世界最大の市場になっている。中国当局のデータに基づくと、03年に中国から国際便を使って旅行した人は680万人だったが、18年は6370万人と10倍近い。
IATAによると、世界の航空会社の総収入も03年の3220億ドルから19年には8380億ドルと、2倍を超える増加となった。
シンガポールの独立系航空アナリスト、ブレンダン・ソビー氏は「(新型肺炎の影響が)副次的な一つの市場だけに収まるのか、あるいはどこかの国全部、またはもっと広い地域に影響を及ぼすかどうか予想できないのは間違いないし、業界のコントロールの範囲外だ」と述べた。