最新記事

ネット

アマゾンの法人税が楽天より驚異的に少ない理由とは? ネットの巨人に根付く「タダ乗り」精神

2019年11月18日(月)12時30分
横田 増生(ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

「アマゾンの納税額」楽天のわずか3%

同業者の楽天と比べるとわかりやすい。楽天が、330億円を超える法人税を納税し、一方、アマゾンは10億円強の法人税を納税する。その差は320億円。アマゾンは、その差額を新しい事業の開発費用や、現行サービスの値引きの原資、さらには従業員の給与の支払いなどに使えるのだから、圧倒的に有利な条件で事業運営を進めることができる。

この決算公告を見て、私自身、「おやっ!」と思ったことがあった。2000年に事業を開始したアマゾンジャパンが、2014年の決算に「第17期決算」としていることである。2000年から決算をしているのなら、第15期決算になるはずだ。

そう思って、以前に取得していたアマゾンジャパンの登記簿を見返すと、アマゾンジャパン株式会社の設立は、「平成10(1998)年9月24日」と書いてある。業務開始は2000年からだが、しかし決算は1998年から始めていたのだ。だから、同社にとって2014年が「第17期」の決算となるわけだ。うっかり見逃すところだった。

アマゾンが使う「巧妙なトリック」

アマゾンジャパンが決算公告で発表している899億円と、米アマゾンが年次報告書で発表している8700億円の差異はどうやって生まれるのか。

財務省出身で、現在は東京財団で研究主幹を務める森信茂樹はこう話す。

「アメリカ本社と日本法人の間におけるアマゾンの税制のスキームは、コミッショネア契約と呼ばれています。コミッショネア契約とは、本来なら、アマゾン本社が行う日本国内での物流業務などの補助的な業務を日本法人が代行することに対し、アマゾン本社が日本法人に委託手数料を支払うという意味です。

仮にアメリカ本社が日本法人に全売上高の10%を手数料として払っているとすると、決算公告と年次報告書の差額が説明できます。このスキームを使えば、日本法人の売上高と法人税を大きく圧縮できます」

アマゾンのような国際企業から税金を正しく徴収するには、国税庁が、その企業が各国にどのような拠点があり、どんな機能があり、その拠点や機能によってどれだけの収益を上げているのかを、正確に把握する必要がある。しかも、そうした情報を得たうえで、他国の徴税機関、この場合、アメリカのIRS(内国歳入庁)との交渉に打ち勝つ必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中