最新記事

米中貿易戦争

米中通商協議が再開 トランプ「非常に良い交渉だった」

2019年10月11日(金)11時36分

米国と中国は10日、閣僚級の通商協議をワシントンで開始した。写真は米中の交渉担当者ら(2019年 ロイター/Yuri Gripas)

10日にワシントンで始まった米中の閣僚級通商交渉は、1日目の協議を終えた。トランプ米大統領は、極めて良好な交渉だったと述べたほか、中国の劉鶴副首相と11日にホワイトハウスで会談することを明らかにした。

米経済団体幹部らは、米国が来週予定されている関税引き上げを見送る可能性に期待を示した。

双方の閣僚による直接協議は7月下旬以来。ムニューシン米財務長官とライトハイザー通商代表部(USTR)代表は、劉氏ら中国当局者とUSTRで約7時間にわたり協議を行った。

トランプ大統領は協議終了後、記者団に対し「非常に良い交渉だった」と述べ、11日にホワイトハウスで劉氏と会談する意向をあらためて示した。会談についてはこれより先にツイッターで言及していた。

ホワイトハウス当局者も1日目の協議は極めて順調に進んだとの見方を示し、「おそらく想定よりも良かった」と述べた。

劉氏は笑顔で記者団に手を振ってUSTRを後にしたが、質問には応じなかった。協議は11日まで行われる。

米中双方から説明を受けた全米商工会議所のマイロン・ブリリアント副会頭(国際部門責任者)は、通貨や著作権保護などの面で初期の合意が得られる可能性があるとの見方を示した。

同氏は記者団に対し、交渉団は市場アクセスや知的財産権保護などの問題を巡り「一段と大きな合意を模索している」とし、「今週の協議で通貨を巡る合意が得られる可能性もある。これにより10月15日付で米政府が関税措置第4弾を発動させない可能性がある」と述べた。

トランプ大統領は10日、比較的小規模の合意を受け入れる用意があるかとの記者団の質問に答えず立ち去った。これまでには、部分的な合意より包括的な合意を望む考えを示している。

中国は「強い誠意」

米国は協議再開を控えた今週、中国政府によるウイグル族などイスラム系少数民族への弾圧への関与を理由に、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>や公安機関など28団体・企業を事実上の禁輸リストに追加したほか、中国当局者に対するビザ発給制限を発表した。

これに対抗し、中国も反体制派と関係がある米国人へのビザ発給規制を厳格化することを計画しているという。

こうした動きを受け、協議に向けてムードが悪化したが、中国国営メディアは中国側が一段の対立激化を回避するため交渉に応じる構えを示していると報じた。

国営新華社によると、劉副首相は通商協議で双方が重要とみなす問題について合意を目指す考えを示し、「中国は強い誠意を持って交渉に臨む。貿易収支、市場アクセス、投資家保護などの面で米国と協力していきたい」と述べた。

米農務省が10日公表した統計によると、通商協議を前に中国が米国からの大豆と豚肉の輸入を急拡大させたことが分かった。民間輸出業者の中国への大豆販売は39万8000トン。1日の販売量が急増したのは今週に入ってから2日目となる。


20191015issue_cover200.jpg ※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国と推定される無人機、15日に与那国と台湾間を通

ワールド

中国、ネット企業の独占規制強化へ ガイドライン案を

ワールド

台湾総統、中国は「大国にふさわしい行動を」 日本と

ビジネス

持続的・安定的な2%達成、緩和的状態が長く続くのも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中