最新記事

日本企業

復活タカラトミー、「立役者」が突如辞任し市場に募る不安

2017年11月25日(土)11時20分
渡辺拓未(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

「リカちゃん」人形や「トミカ」、「プラレール」などで知られるタカラトミー。不振脱却の立役者が去った後も、好調を維持できるか(撮影:尾形文繁)

暗く長いトンネルからようやく抜け出しつつある玩具大手のタカラトミー。そんな同社を復活へと導いた立役者が、突如、表舞台から姿を消した。

11月7日、タカラトミーが発表した2018年3月期中間決算は、売上高879億円(前年同期比14.7%増)、営業利益65億円(同2.5倍)と絶好調だった。国内で「トミカ」や「リカちゃん」、「プラレール」といった定番商品の売れ行きが堅調だったことに加え、バトル専用コマの「ベイブレードバースト」や人気ゲームと連動する玩具「スナックワールド」といった戦略の中核に据える商品が順調にヒットを飛ばした。

助っ人外国人社長が突如辞任

申し分ない決算にもかかわらず、発表翌日の株価の終値は前日比マイナス11%と大きく下落した。原因は決算と同時に発表された役員人事だった。2015年以来社長を務めてきたハロルド・ジョージ・メイ社長が、12月末に辞任することになったのだ。

10日に開かれた決算説明会にメイ氏は登壇せず、来年1月から社長に就任する予定の小島一洋副社長が主な説明を行った。プレスリリース上でメイ氏は辞任の理由を「改革の道筋をつけ、自分の役割が達成できた」ためとした。その言葉の意味を明らかにするには、メイ氏がタカラトミーに入社した2014年前後の状況を振り返る必要がある。

タカラトミーは当時、海外事業の慢性的な赤字に悩まされていた。同社が海外展開を本格化させたのが2011年。この年、玩具やベビー用品を手掛ける米RC2コーポレーション(現トミーインターナショナル、以下TI)を約500億円で買収し、それを基盤に世界展開をもくろんだ。

だが、この買収は裏目に出る。商習慣の違いを埋められず、欧州での事業統合に失敗。さらに、タカラトミー側にノウハウがなかったTIのベビー用品事業が不振に陥る。TIの売上高の約半分を占めていただけに、大きな打撃となった。

買収後の運営でつまずいたことで、欧米地域では慢性的な赤字が定着。加えて国内でヒット商品に恵まれなかったことも重なり、2012年3月期に101億円あった営業利益は、その後数年間、20億~30億円で低迷する事態となった。

状況を打開するために"救世主"として招聘されたのが、メイ氏だった。2014年に副社長として入社し、翌年には社長に就任。ユニリーバ・ジャパンや日本コカ・コーラで発揮してきたマーケティングの手腕に大きな期待がかかっていた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米上院通過の税制・歳出法案、戦略石油備蓄の補充予算

ビジネス

物言う株主、世界的な不確実性に直面し上半期の要求件

ワールド

情報BOX:日米関税交渉の経緯、協議重ねても合意見

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増 予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中