最新記事

インタビュー

「クリエイティブ51、ビジネス49」をバランスさせる経営

[荒木隆司]株式会社ドワンゴ 代表取締役社長

2016年1月28日(木)11時12分
WORKSIGHT

社内の挑戦意欲の維持のためトップがなすべきことは

 いま、ドワンゴはターニングポイントを迎えています。

 1997年にゲーム開発の会社として生まれたドワンゴは、2000年代初頭にモバイル向けのコンテンツ配信で成長し、さらに2006年に立ち上げた「niconico」*(ニコニコ動画)を日本最大規模の動画サイトへと発展させました。

 順風満帆のように見えるかもしれませんが、紆余曲折はありました。niconicoは立ち上げてしばらくは赤字続きだったんです。黒字化したのは開設から4年目ですね。黎明期から初期の発展期までは本当に収益につながらなかった。でも、ユーザーの投稿動画と生放送番組を軸とした動画コミュニティサービスは他にないユニークなもので、潜在的な価値が見込まれました。

 そこで当時調子のよかったモバイルの音楽配信ビジネスで会社を支えながら、niconicoの足場を固めて事業の中核をniconicoにスイッチさせようという、そんな状況で僕が社長に就任したんです。2012年11月のことです。

いまこそ必要な"ちゃんとした"経営

 当時はマネジメントが十分に機能しているとは言いがたい状態でした。例えば予定外の予算が次々と申請されて、それがどんどん通っていく。「クリエイティブな事業をやっているのだから」と、みんなが自由気ままにやっている印象でした。

 大金持ちが道楽で好きなことをやるならともかく、会社なので使えるお金も限られます。もちろん、お金を使うことでそれが将来的な収益につながったり、あるいはブランド向上やマーケティングに役立つならいいのですが、もうからないことに予算を注ぎ込んだり、売上は上がっても利益がゼロという状態が続くのでは資源が配分できず、組織として立ち行かなくなります。

 最初は少々無駄使いをしてもモバイルビジネスで持たせることができたけれども、中核事業にする以上はniconicoで会社が回っていかないといけません。そして今、niconicoをさらに大きく発展させることができるか、収益基盤を盤石なものとして革新的なサービスを継続的に提供していけるかどうかという分岐点にあります。ここで必要なのが"ちゃんとした"経営、すなわちマネジメントだと考えています。

 経営は全体のバランスを見ないといけない。価値に見合わない過大な投資や繰り返される失敗、PDCAサイクルの不徹底などは見直すべきです。そうやって組織として当たり前の形にしていく、それがマネジメントの役割だと思っています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中