最新記事

テクノロジー

飲んだ運転手は車が「拒絶」

酔っぱらいドライバーには運転させない新システム

2015年7月8日(水)19時15分
アイリッシュ・オガラ

乱痴気騒ぎ 車のなかでこんなことはできなくなる Manuel Burgos / iStockphoto

 夏が近づき夜遊びの季節になると、帰り道にはつい酔ったままハンドルを握ってしまう人もいるかもしれない。しかし近い将来、そんなドライバーは車のほうから「拒絶される」ようになるだろう。

 全米高速道路輸送安全局(NHTSA)が先頃発表したアルコール検知システム(DADSS)の試作機はかなりの強硬派だ。ドライバーが望もうと望むまいと、自動的に血中アルコール濃度を測定する。

 測定方法は2つ。1つめは、ドライバーの吐き出した息を車のハンドルの両脇に付いた分析機に吸収し、アルコール濃度を測る。もう1つは、エンジンキーに置いた指先に赤外線光を照射して測定する方法だ。その結果、基準値を超えた場合には、車が始動しなくなるという。

「DADSSを使えば、10代のドライバーや商業車両の運転手など、特定の人々の飲酒運転を防げるようになるかもしれない」と、NHTSAのマーク・ローズカインド局長は語った。「誰でもこのシステムを導入できるようにすれば、飲酒運転による死亡事故と戦う上で強力な武器になるだろう」

 しかし限界もある。DADSSシステムは搭載が義務付けられるわけではないし、車の所有者が自分で購入して取り付ける場合には約400ドルの費用が掛かる。

 検知する基準値が厳し過ぎると批判する声もある。アメリカ飲料協会のセーラ・ロングウェルはデトロイト・ニュース紙に対し、DADSSは「夕食時に付き合いでワインをグラス1杯飲む程度の、分別ある人たちでさえ運転できなくしてしまう」と語った。

 とはいえ、今も飲酒運転による痛ましい事故が後を絶たないなか、新検知システムへの期待は大きい。DADSSの調査プログラムには、BMWやフォード、トヨタなどの大手自動車メーカーも参加している。20年までには同システムの技術が新車に装備される見通しだ。

 アメリカでは13年、飲酒運転が原因の事故で死亡した人が1万人を超えた。新システムが実用化されれば、年間最大7000人の命が救えるともいわれている。ドライバーも少しは我慢して、車の「警告」に耳を傾けるべきかもしれない。

[2015年6月30日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中