最新記事

新興国

「中印経済がアメリカを抜く」の信憑性

20年後には中国とインドが欧米や日本に代わって世界経済の主役になるという分析は正しいのか

2012年12月12日(水)16時24分
ジェーソン・オーバードーフ

豊かさは続く? インド最大の都市ムンバイのショッピングモールで買い物を楽しむ女性客たち(今年7月) Danish Siddiqui-Reuters

 20年以内に中国経済の規模はアメリカ経済を上回り、インド経済はそれ以上のスピードで成長する――12月10日、アメリカの情報機関がそんな報告書を出した。

「中国の経済成長率が減速する一方で、インドは加速する」と、米国家情報会議(NIC)の報告書は分析する。「2030年にインドは、現在の中国のような成長著しい経済大国になっている可能性がある。その頃、8〜10%という現在の中国の経済成長率は、遠い昔の記憶になっているだろう」

 さらに報告書は、2030年にはアジア全体の経済規模は、北米とヨーロッパを足したものを上回るとする。ヨーロッパや日本、ロシアなどの経済の規模は「相対的にゆっくりと縮小していく」という。

 一方、中国の経済的な影響力が強まっても、アメリカは超大国の地位を維持すると報告書は予測する。地球規模の問題に対するときには、アメリカだけが世界的な協力体制を取りまとめ、リーダーシップを発揮することができるからだ。

「地球的な規模で考えたとき、中国がアメリカの立場にとって代わることはないだろう」と、NICのマシュー・バローズ委員は会見で語った。「世界最大の経済を持つことは重要だが、最大の経済大国が、必ずしも超大国であるとは限らない」

 だが、モルガン・スタンレーの新興市場部門責任者で、新著『ブレークアウト・ネーションズ』を発刊したルチル・シャルマを信じるなら、こうした予測は話半分に聞いておかなければならない。

 シャルマが10日、インド紙「エコノミック・タイムズ」に寄せた論説を紹介しよう。


 新興国の中で急速な成長を10年間続けられるのは3分の1程度の国々で、20年30年と成長を続けることはさらに難しい。これは歴史が証明している。急成長が続けば続くほど、それが終わりを迎える可能性は高くなる。多くの人々は長期的には新興国が豊かな国々に「追いつく」と考えているが、そうはならない。新興国の人々の平均的な収入は、豊かな国々の1950年当時の収入と同じくらいだ。

 インドは2000年代に力強い成長を遂げたが、それはつまり今後も過去10年と同じような成長が続く可能性が低くなったということだ。それに、すでに成長は減速している。


From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ、和平交渉で強硬姿勢示唆 「大統領公邸攻撃」でウ

ワールド

ウクライナ支援「有志連合」、1月初めに会合=ゼレン

ワールド

プーチン氏公邸攻撃巡るロの主張、裏付ける証拠なし=

ワールド

米軍のウクライナ駐留の可能性協議、「安全保証」の一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中