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ドイツ

メルケルの「子育て給付」は女の敵?

公立の保育園不足を解消するために打ち出した政策は母親に家で育児をさせるもの

2012年12月4日(火)14時57分
スダ・ダビド・ウィルプ

不条理 メルケルは働く女性のロールモデルのはずだが Thomas Peter-Reuters

 公立の保育所に子供を入れない親に保育手当を支給する──ドイツのメルケル政権が掲げている公約だ。これが現実になれば、より多くの女性がキャリアを手放すことになるだろう。まさに時代遅れの政策であり、これでドイツの出生率が上がることはない。

 ドイツの出生率は約1.4人。政府は育児手当などで出産を促すが、効果はあまり見えない。公立保育所の不足や社会的なプレッシャーもあり、ドイツ人女性は子育てとキャリアの両立は無理だと考えている。

 今回の保育手当は、公立保育所に入れなかったら毎月助成金が支給される。これで自宅で育児をする女性が増えるため、来年8月までに全国の1〜3歳児の保育を確保すると公約した政府には、うまい言い訳になる。

 しかし地方政府からは批判の声も出ている。出産後の女性を家に閉じ込めるのではなく、職場復帰できるよう保育士や保育所の整備に力を入れるべきだというのだ。

 出生率の上昇に効果的なのは、生んで働きたい女性が直面する障害を取り除くこと。保育手当がその答えではないはずだ。

GlobalPost.com特約

[2012年10月31日号掲載]

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