最新記事

製造業

フォックスコンが対米工場進出?の狙い

アップルの噂の液晶テレビはiPhoneを生産しているフォックスコンがアメリカで作ることになるかもしれない

2012年11月9日(金)16時31分
ジェシカ・フィーラン

労働集約型 iPhoneやiPadをアメリカで作るのは難しそうだが(中国・広東省の工場) Bobby Yip-Reuters

 世界で販売されるiPhoneの大部分を生産している台湾系電子製品メーカー、富士康(フォックスコン)がアメリカに工場を開くのではないか? そんな噂が出ている。

 業界ニュースサイト、Digiタイムズに複数の「市場ウォッチャー」が語ったところでは、フォックスコンは現在、デトロイトやロサンゼルスなどで候補地を探している。同社はアメリカの工場で、iPadやiPhoneほど労働集約型でない液晶テレビの組み立てを行うという話だ。

 現時点で、これらはすべて未確認の情報だ。アップルはまだ液晶テレビを販売してもいない。ただし、そのうち販売するだろうという予測は何カ月も前から出ている(情報サイトのアップルインサイダーによると、今年のクリスマスまでには店舗に並ぶとみられている)。

 今週はDigiタイムズの記事とともに、フォックスコンの中国工場――劣悪な労働環境でたびたび話題になる工場だ――からも気になる動きがあった。実際の製造現場を見てもらうため、アメリカから技術者数十人を招くというのだ。とりわけ、生産ラインの自動化について学んでもらいたいという。アメリカ進出へ向けた布石らしい。

 AP通信によれば、フォックスコンの郭台銘(クオ・タイミン)会長はこう語っている。「バラク・オバマ大統領が製造ラインをアメリカに戻そうとしても無理だろう。アメリカはあまりに長い間、海外委託生産に頼ってきたからだ」

 専門家も、中国より労働者の賃金が高いアメリカに製造ラインを戻す上では自動化がカギになると語っている。

 経済誌フォーブスの記事でバイズー・チェンは、今日のコスト構造を考えたら昔ながらの組み立てラインは合理的でない、と指摘している。しかしコンピュータのデータから立体を作り上げる3Dプリンティングのような新技術は製造を「分散させ」、アメリカでも高い生産性を実現することができる。
 
 フォックスコンの郭は今週、アップルの新しいiPhone5の需要が好調で生産が追いついていない、とも述べた。iPhone5はこれまでになく複雑な製品で、組み立てが難しいという。しかし、受注の一部を外部委託する計画があるかどうかは発言を差し控えている。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中