最新記事

経済成長

過激化する中国労組ストが暗示する未来

経済の急成長と低い賃金の伸び率との大きすぎるギャップが激しいストライキの呼び水に

2012年9月25日(火)16時19分
マシュー・イグレシアス

震源地 アップルに部品を供給するフォックスコンの工場は暴動で操業停止に(9月24日) Reuters

 台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)は、アップルをはじめ多くの大手ハイテク企業に重要な部品を供給している電子機器メーカー。9月24日、中国・山西省太原にある同社の工場で、従業員と警備員の小競り合いが大規模な暴動に発展。多くの怪我人が出て、操業が一時停止する事態に陥った。

 アメリカで話題の過激な左派系ウェブ雑誌「ジャコバン」は、近年の中国の労働争議について興味深い視点を提供している。その指摘は、今回の暴動を読み解くカギになる。

 現代中国の状況は構造的な意味で、欧米の労働運動の全盛期と似通っている。急激な産業化が進むなか、中国の工場労働者の賃金上昇率は、彼らがもたらす生産性の上昇率より低く抑えられている(大雑把な言い方をすれば、中国の農業従事者の賃金と生産性が非常に低いため、それに引きずられて工場労働者の賃金も十分に上がらない)。

 そのため、企業には思いがけない儲けがもたらされる一方で、労働紛争も起きやすくなる。中国の抑圧的な体制は労働組合の結成には不向きだが、一方で年金も労組所有のビルも何ももたないだけに、非合法なストライキを打っても労働者側が失うものはほとんどない。

 ジャコバンによれば、いまや中国は世界の労働運動の震源地だ。しかも、法律で定められた以上の大幅な賃上げを勝ち取ったケースもいくつもある。多くの大都市で最低賃金が二桁の伸びを果たし、多くの労働者が初めて社会保険の恩恵を受け始めている。


転機はホンダ部品工場の賃上げスト

 中国の労働運動はこの2年間で質的にも進化していると、記事は指摘している。2010年以前は、賃金の未払いに抗議するストライキが主流だった。要求内容は「しかるべき賃金を払え」というシンプルなもので、頻発する企業の法律違反に対する「自己防衛」的な意味合いが強かった。

 転機となったのは、10年に広東省南海にあるホンダの部品工場で起きた賃上げストだ。これを機に労働者の要求内容は「攻撃的」に転じ、法律で定められた以上の賃上げ要求が多発するようになった。

 中国の労働運動の今後の展開を予測するのは困難だが、この問題は中国のこれからの25年がこれまでの25年と大きく異なる理由を説明する重要なカギになるだろう。絶え間ない都市化と産業化、賃金上昇の抑制によって劇的な急成長が達成できることを、中国はこれまでさまざまな面で証明してきた。だが、その手法にはやはり限界が訪れるはずだ。

© 2012, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ミネソタ州知事と協議 地裁は移民摘発停

ワールド

イスラエル、ガザ最後の人質の遺体収容 ラファ検問所

ワールド

EU、米メタに有害投稿対策強化促す 「ワッツアップ

ビジネス

USAレアアース株、一時26%上昇 米政府の16億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 7
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中