最新記事

内幕本

フェイスブックを動かすお子様社員たち

元女性社員が暴くSNS最大手の素顔はセクハラが横行する男中心社会だった

2012年9月14日(金)17時08分

部下もトップも 未熟な行動が目立ったのはザッカーバーグCEO(左)も同じ REUTERS

 キャサリン・ロッシが名門ジョンズ・ホプキンズ大学の大学院を中退して、SNS最大手フェイスブックの51人目の従業員になったのは05年のこと。入社してみて分かったこと、それはフェイスブックは未熟な行動とセクハラがまかり通る、まるで男子学生のサークルのような会社だということだった。

 ロッシはフェイスブックの内幕を描いた著書『少年王たち──ソーシャル・ネットワークの中心地への旅』で、同社を動かしてきた企業文化を赤裸々に描いている。

 入社初日のことをロッシはこう振り返る。「オフィスは、テレビゲームの女性キャラクターみたいなイラストであふれていた。どれもウエストが細くて、小さなトップスから胸がはみ出している。子供っぽくはあったけれど、私はそれほど気にしなかった。郊外で育ちハーバードを出た男の子たちなら、こういうのを都会的でかっこいいと感じるのかもしれないと思ったからだ」。その日、オフィスを案内してくれた技術者は「一部から苦情が出たので、あまりにも露骨なイラストは男子トイレに貼ることになった」と話してくれたという。

 CEOのマーク・ザッカーバーグの描くフェイスブックの未来像は、壮大だが漠然としていた。「情報の流れをつくり出したい」というのが口癖だったが、反論するには具体性に欠け過ぎていたし、「反論などあり得ない」と彼自身が言っていた。

 06年の冬、タホ湖へ社員旅行に行ったときのこと。安物ワインと歌で盛り上がった後、ロッシは余興で部屋に飾られていたクマの頭付き毛皮をかぶった。写真アプリを作った技術者が、当然ながら写真を撮った。「マークは私に向かって皇帝のように偉そうな身ぶりをしてみせた。クマの格好をした私は、立ったまま腹を抱えて笑った」

 だがこの罪のないお遊びは思わぬ波紋を呼んだ。週明け、フェイスブックのアルバムに載った写真を見てロッシは驚いた。マークが女性従業員に服従を強いているような印象の写真になっていたからだ。その後、この写真は酔ったザッカーバーグが同僚を愚弄しているかのようなキャプション付きで、ゴシップサイトに転載された。


誕生日に顔付きTシャツ

 ザッカーバーグは名刺に「俺がCEOだ、ビッチ」と書いたりもした。ある女性社員が、男性社員から「かみつきたいケツだな」と言われたと会議の席で報告したところ、ザッカーバーグは「それってどういう意味?」と答えたという。

「06年5月のマークの誕生日に、秘書からメールが来た。ほかの女性社員と同じく、マークの顔写真の付いたTシャツを着るのがその日の私の仕事だというのだ」。これに対し男性社員は、アディダスのサンダルを履くよう指示された。「女はマークへの献身を誓い、男はマークになるべし、という男女別の行動規範があるのは明らかだった」とロッシは言う。

 ラスベガスへの社員旅行では高級ナイトクラブに繰り出した。ところが男性社員たちは、店の女性たちといいムードで酒を飲むどころか、彼女たちを寄せ付けなかった。ある社員などは、相手が召し使いか何かのようにシッシッと追い払ったという。

 救いの神だったのが、今年6月に初の女性取締役に就任したシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)だ。ロッシは彼女に、2人の同僚男性についての相談を持ち掛けた。「数カ月後のある日、彼女は私のデスクに来てビジネスライクな低い声でこう言った。『先日の件は両方とも処理しました』。部下たちに性交渉を持ち掛けた管理職はいつの間にか降格となり、セクハラをしてきた技術者は別の部署へ異動になった」

[2012年8月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済、26年第1四半期までに3─4%成長に回復へ

ビジネス

米民間企業、10月は週1.1万人超の雇用削減=AD

ワールド

米軍、南米に最新鋭空母を配備 ベネズエラとの緊張高

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中