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ここまで転落!イギリス経済を待つ日本化

3四半期連続で収縮し景気の二番底に陥るなか、未来を示唆する不穏な指数

2012年7月30日(月)17時01分
マシュー・イグレシアス

政府の責任? キャメロン政権が誕生した当時よりもイギリスのGDPは下落している Andrew Winning-Reuters

 開幕したロンドン五輪では世界最強の選手たちがその技を競っているが、そんな輝かしい光景とは対照的に、イギリスの景気は悲しいほど回復への勢いを失っている。今年第2四半期のGDPは前期比0.7%減となり、景気の二番底にはまり込んでいることを露呈した。
 
 英フィナンシャルタイムズ紙は、これは単に3四半期連続の減少というだけでなく、2010年5月のキャメロン政権発足時よりもGDPが下落していることを意味していると指摘した。

 だからといって、こうした状況のすべてがイギリス政府の責任というわけではない。地理的に考えれば、イギリスがアメリカなどよりもユーロ圏の危機のあおりを受けやすいのは当然だ。

 実際のところイギリス政府は、緊縮政策の名の下で行政サービスを次々と民営化してきたが、その一方で金融部門に過度に依存する国内経済の構造改革を迫られてきた。金融政策上はほとんど有効に働いていない中央銀行の低金利政策が景気低迷に追い打ちをかけ、さらに政府は明確な理由もないまま何種類もの増税に踏み切ってきた。その結果、イギリス経済はまさに最悪の状態に陥っている。

低い国債利回りが命取りに?

 その間、イギリス政府は国債の金利を低く抑えることには異常なほどに固執してきた。この点においては、まさに狙い通り。イギリス10年国債の利回りは、奇妙なほど低く抑えられている。

 だが、こうした目的を達成したところで、その結果がどうなるかイギリス政府は分かっていないらしい。自国通貨建ての国債で借り入れを行っている先進国が金利を極端に低く抑えようとすれば、かつての日本並みの不況が付いて回るものだ。 それでもイギリス政府は、狙い通りだと胸を張れるだろうか。

© 2012, Slate

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