最新記事

ユーロ危機

再選挙へ突っ走るマイペースなギリシャ

緊縮生活の苦しさから、国民は自己破滅的な極左や極右を選ぶしかない袋小路に追い込まれた

2012年6月13日(水)14時33分
マシュー・イグレシアス

ユーロを脅かす男 反緊縮を掲げ、6月17日の再選挙でも優勢と予想されるギリシャ急進左派連合のツィプラス党首 Tobias Schwarz-Reuters

 迷路に入り込んだギリシャの行き着く先は、やはりユーロ離脱と破綻なのか。EUなどからの金融支援と引き換えに緊縮財政を進めてきた連立与党が5月初旬の総選挙で惨敗した。耐乏生活に国民がノーを突き付けた形だが、あまりに愚かな選択だと言わざるを得ない。

 選挙では「債務返済を拒否しよう」と訴えた極左政党や、移民排斥を掲げる極右政党が躍進し、内閣樹立に向けた先週の連立協議はことごとく失敗。来月に再選挙が行われる見通しが高まった。再選挙後も同じ状態に陥る可能性は高く、もはやギリシャ政治は崩壊したも同然だ。

 確かにユーロ体制には問題があり、欧州中央銀行(ECB)の判断にも誤りはあった。だが、危機の根源はギリシャ自身にある。この国はユーロに参加した時点で申告したほどのカネを持っておらず、その後も他国をだましながら、身の丈に合わない暮らしを続けてきた。

 恐ろしいのは、政府が国民受けの悪い政策を進めるしかなく、それに不満な有権者が総選挙で極右や極左を選ぶしかなかったことだ。財政赤字に苦しむ他のユーロ諸国は、ギリシャのような袋小路に迷い込むべきでない。


© 2012, Slate

[2012年5月23日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米北東部7州とNY市、独自のワクチン推奨で連携 政

ワールド

米つなぎ予算案、19日可決か 下院議長「必要な票あ

ビジネス

米フェデックス、6─8月期利益が予想上回る コスト

ワールド

米下院議員、中国の希土類規制解除なければ航空機発着
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中