アングル:3月米CPI急上昇、FRBに問われる利上げ回避論の説得力
2025年11月、米ワシントンのFRB本部で撮影。REUTERS/Elizabeth Frantz
Howard Schneider
[ワシントン 10日 ロイター] - 米国は2022年6月にインフレ率が跳ね上がり、ピークに達した。エネルギー価格が高騰したほか、食料品や住居費、自動車などさまざまな品目が値上がりしたためだが、米連邦準備理事会(FRB)高官は当時、きちんと対応して大幅な利上げをすると請け合い、その後実際に利上げを断行して景気を冷やした。
10日発表の3月消費者物価指数(CPI) nL6N40T0V6は総合指数の前月比が、この「物価爆騰の夏」以来となる上昇を記録したが、FRBは約4年前とは逆の対応を迫られている。つまり、今回の物価高はイラン戦に関連したエネルギー価格上昇が主因であり、米国とイランの停戦が維持されて原油価格が落ち着けば利上げは必要なくなる可能性が高く、インフレの性質は4年前と異なるのだと、物価高に疲れ切った国民に対して説明しなければならないのだ。
インフレが年率2%というFRBの目標を5年以上も上回り続けている現状を踏まえると、こうした説明が十分な説得力を持つか微妙だ。ガソリンや軽油価格が1カ月で過去最悪の上昇を記録して消費者を直撃。平均的なガソリン価格は2月の1ガロン=約3ドルから4.15ドルへと跳ね上がり、各種調査でインフレ期待も上昇している。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は3月のCPI発表前日のインタビューでロイターに「CPIが高い数字になること自体は誰にとっても驚きではないだろう」と述べつつ、そのことは必ずしもFRBが現在の政策方針―金利を据え置く、あるいは将来的に利下げするという選択肢―を変更することにはつながらないと述べた。停戦が維持され原油価格が下がればインフレは緩み、FRBはいずれ借入コストを引き下げることが可能になるかもしれない一方、原油価格とインフレが粘着的に高止まりすれば、FRBは政策金利を据え置いたまま様子を見ることができる、というのがデイリー総裁の見解だ。その上で、インフレが再び急加速し、FRBが後追いで利上げを迫られる可能性は低いとも述べた。
投資家は現在、FRBが政策金利を少なくとも27年のかなり先まで据え置くと予想している。
デイリー氏は「原油価格のショックが起きる前から、(FRBには)やるべき仕事が残っていた。そこに原油価格ショックが加わり、残された仕事を処理するのにかかる時間が伸びた」と説明。「それがどれくらい続くのかは誰にも分からない。我々は、任務を果たしつつあると確信できるまで、ただ金利据え置きを続けることになるかもしれない」と発言した。
こうした姿勢は22年当時のFRBのトーンとは明らかに異なる。というのも、現在のインフレは当時とは性質が違うからだ。
3月の総合インフレ率は前月比0.9%と劇的な上昇を示し、年率換算で11%を超えた。一方、エネルギーと食料品を除くコア指数の上昇率は、前月比が0.2%と予想を下回り、前年比は2.6%にとどまった。
コアインフレは、価格変動が激しく、商品(コモディティー)市場に左右されやすいエネルギーと食料品を除外しており、インフレの基調を決める広範な需給環境を反映すると考えられている。しかし、食料とエネルギーは家計の日常的な支出の大部分を占めており、ガソリンや牛肉の値上がりは消費者心理に強い影響を与える。
こうした価格上昇は、FRBが注視する各種調査の結果―つまり中央銀行のインフレ抑制能力に対する信頼感が維持されるかどうか―に影響を与えるほか、政治的な態度にも波及し得る。生活費引き下げを公約として掲げてきたトランプ大統領と与党共和党にとって、11月の中間選挙を前に、これは特に神経質な問題だ。
FRBにとってのリスクは、インフレ率が5年間も目標を上回り続けたことで、人々が最悪の事態を予期するようになり、今回のエネルギー価格ショックによって国民の心理が再度変化してインフレをより制御しにくくなってしまうことだ。
米ミシガン大学が10日発表した4月の消費者信頼感指数(速報値)は、向こう1年間のインフレ期待が前月の3.8%から4.8%へと急上昇した。さらに重要なのは、5年先までのインフレ期待も3.2%から3.4%へと上昇した点だ。
今回のインフレ上昇は「一過性(トランジトリー)」だと考える根拠がFRBにはある。トランジトリーとは、新型コロナウイルスのパンデミック期にインフレが上昇し始めた際に用いられた言い回しだが、その後、物価上昇が長引いたため、使われなくなった。
今回は、FRBが重視する基調的インフレ率が依然として目標の2%を約1%ポイント上回った状態にとどまる中で、こうした見立てを市場や国民全体に納得してもらう必要がある。
セントルイス地区連銀の元総裁で、現在はパデュー大学ミッチ・ダニエルズ経営大学院の学部長を務めるジェームズ・ブラード氏は「この状況で政策金利を引き下げることはできない。そんなことをすれば、FRBは信認を失うだろう」と述べた。
その上で「まさに紙一重だ。金利を据え置いたままインフレが再び下振れし始めれば、非常に素晴らしい結末を迎えられる。しかし、そうならなければ、FRBは恐らく行動を起こして、自分たちは本気だということを示さなければならないだろう」と述べた。





