最新記事

中国

曲がり角の中国経済を占うこの数字

成長率は鈍化し輸出入も激減、それでもユーロ圏やアメリカより危機に強い理由

2012年5月28日(月)18時14分
トマス・ミュシャ

前進あるのみ ペダルをこぐのをやめるとバランスを崩す、と言われ続けてきた中国経済だが(上海) Claro Cortes IV-Reuters

 中国のお見合い番組である時、出演した女性がこう言った。「自転車の荷台で笑うより、泣きながらBMWに乗るほうがまし」。

 物欲旺盛な今どきの中国女性たちを見事に言い表した言葉だ。

 中国の人々にとって自転車は貧しい庶民生活の象徴だが、一方で中国経済を表す格好の例えとしても用いられる。「ペダルをこぎ続けるかぎり、万事順調に進む」というわけだ。エコノミスト誌のアジア経済エディター、サイモン・コックスは中国経済についてこう書いている。


 自転車(特に重荷を積んだ自転車)は、進み続けないとバランスを崩してしまう。中国経済も同じように言われることがある。勢いを失った途端に倒れてしまうだろう、と。


 しかし、この例えは時代遅れかもしれない。もはや中国政府はGDP成長率8%を達成しなければならないとは考えていない。今年3月には成長目標を7・5%に引き下げた。

 それに、最近の中国経済を牽引しているのは輸出ではない。投資だ。工場や機械、インフラなど近代化にかかわる分野への投資が盛んに行われている。

 中国経済のいったい何が変化しているのか。短期的に見れば、中国はいたるところ問題だらけだ。工業生産は低下し、住宅建設も減少。鉄鉱石や半導体などの需要は鈍化し、輸出入は激減している。

 こうした不確実性の上にさらにのしかかっているのが、不安定な政治体制だ。中国共産党指導部が10年に1度の大規模な体制移行期を迎えた今、さまざまな問題が噴出している。

外国からの借金には頼らない

 しかしエコノミスト誌は先週、中国にはまだ十分に強みが残っていると分析した。


 中国は外国からの借金にほとんど頼っていない。かつての東南アジアや現在のユーロ圏のように流動的な外国資本を頼りにするのではなく、中国経済の成長は内需によって支えられている。

 中国の貯蓄率はGDPの51%で、投資率さえ上回っている。こうした金は中央政府が統制する金融システムに蓄えられ、いざという時には返済遅延やデフォルト(債務不履行)に対応できるようになっている。


 その上、中国政府が抱える債務はGDPの約25%程度。GDP比100%近いアメリカなどの国々に比べれば、大した数字ではない。債務比率が低いことで、中国政府には必要な時に経済を刺激する余裕が生まれる。

 これだけ強みがあれば、中国はユーロ圏など外から危機が降りかかってきても十分持ちこたえられる......といいのだが。


From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、9月利下げ観測維持 米ロ首

ビジネス

米国株式市場=まちまち、ダウ一時最高値 ユナイテッ

ワールド

プーチン氏、米エクソン含む外国勢の「サハリン1」権

ワールド

カナダ首相、9月にメキシコ訪問 関税巡り関係強化へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 5
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中