最新記事

法王庁

バチカンに渦巻くマネロン疑惑

汚職批判の内部文書が流出しマネーロンダリング疑惑も浮上。信用失墜のバチカンの行方は

2012年5月15日(火)18時15分
バービー・ラッツァ・ナドー(ローマ)

相次ぐスキャンダルでベネディクト16世(右)も浮かない顔? Tony Gentile-Reuters

 スキャンダル続きのローマ法王庁がまたもやパニックに陥っている。今回の原因は、法王庁の奇妙な会計手法をめぐるマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑だ。

 米大手銀行JPモルガン・チェースは今月末、バチカンの国家財政管理を担う宗教事業協会(通称バチカン銀行)がミラノ支店に保有する口座を閉鎖する。送金活動の疑問点について説明を求めたが、バチカン側が「対応不可能」だったためだ。

 問題の口座は毎日、営業時間終了の時点で残高がゼロになっていた。イタリアの経済紙によれば、09年の開設直後から短期間で総額15億ドルを、バチカン関係の別の口座へ送金していたという。これほどの大金を短期間に送金したのはなぜか。納得のいく説明は得られていない。

 口座閉鎖措置は、イタリアの財務警察が継続中の捜査を受けたものだ。警察は10年9月にバチカンの資産3300万ドルを一時凍結し、粉飾会計の疑いがあるとして捜査を続けている。

 バチカンのカネが「清らか」でないことは、1月にイタリアメディアに漏洩された機密文書の内容からもうかがえる。そのいい例が、バチカン市国行政庁幹部だったカルロ・マリア・ビガノ大司教の書簡だ。

 昨年3月にローマ法王ベネディクト16世宛てに送った公的な書簡でビガノは「私がいま転任すれば、各部門に巣くう汚職や権力乱用を一掃できると信じる人々が戸惑い、落胆するでしょう」と、法王庁に対する汚職対策の継続を訴えた。しかしビガノは昨年10月、駐米ローマ法王庁大使としてワシントンへ飛ばされた。

バチカン銀行を閉鎖せよ

 法王庁の広報担当者が「バチリークス」と名付けた文書漏洩事件を受け、バチカンは内部調査に乗り出した。情報源は今も特定されていないが、現時点で文書の漏洩は止まっている。

 健全さを証明するため、できる限りの行動を取っているというのが法王庁の主張だ。10年末には、財務情報監視局を設立。国際機関からマネーロンダリング防止規制を遵守しているとのお墨付きを得て、疑惑を一掃するのが狙いだった。

 努力もむなしく、カネをめぐる法王庁の評判は傷つく一方だ。米国務省は3月上旬、今年度の「国際麻薬統制戦略報告書」を発表し、マネーロンダリングに利用される懸念がある国のリストに初めてバチカンを加えた。

 「バチカンを清浄化する最良の方法は、言うまでもなくバチカン銀行を閉鎖することだ」と、ロイターの経済コラムニスト、ピエール・ブリアンソンはブログで指摘している。「バチカン銀行は、財政管理活動を秘密のベールで覆うために存在しているとしか思えない」

 バチカンのマネーロンダリング疑惑や汚職疑惑が取り沙汰されたのは初めてではない。30年前には、バチカンの資金管理を行う銀行の頭取が変死する事件も起きたが、当時のバチカンは見事に評判を回復した。

 果たして今回もそうできるか。すべては神の御心、あるいは会計士の腕次第だ。

[2012年4月 4日号掲載]

MAGAZINE

特集:世界を変えるブロックチェーン起業

2019-4・23号(4/16発売)

難民にデジタルIDを与え、医療情報や物流を正しく管理── 分散型台帳を使う新事業・新ビジネスが各国で始まった

人気ランキング

  • 1

    巨大なホホジロザメが一匹残らず逃げる相手は

  • 2

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 3

    謎のシャチが見つかった?未知の4種目の可能性

  • 4

    [動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

  • 5

    「美人銭湯絵師」の盗作疑惑に見る「虚像」による文…

  • 6

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう…

  • 7

    家庭料理に求めるレベルが高すぎて、夫の家事分担が…

  • 8

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 9

    「日本越え」韓国経済の落とし穴

  • 10

    韓国の日本大使館、建て替えが進まず空き地になった…

  • 1

    巨大なホホジロザメが一匹残らず逃げる相手は

  • 2

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 3

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練された方法を持っていた

  • 4

    謎のシャチが見つかった?未知の4種目の可能性

  • 5

    少女の乳房を焼き潰す慣習「胸アイロン」──カメルー…

  • 6

    [動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

  • 7

    これが米大企業のほとんどを所有し牛耳るビッグ・ス…

  • 8

    「美人銭湯絵師」の盗作疑惑に見る「虚像」による文…

  • 9

    台湾で女性のまぶたから生きたハチ4匹が摘出される

  • 10

    大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!

  • 1

    巨大なホホジロザメが一匹残らず逃げる相手は

  • 2

    無残、少女の足の裏に無数の寄生虫!

  • 3

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕上げに八つ裂き」

  • 4

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 5

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 6

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 7

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 8

    映画『ボヘミアン・ラプソディ』が語らなかったフレ…

  • 9

    「令和」に関して炎上する中国ネット

  • 10

    大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
広告営業部員ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月