最新記事

人件費

再度の賃上げは中国工場を殺すのか

中国が世界に安価な労働力を提供する時代は終りつつある。その先に待つのは高付加価値化か倒産か

2011年12月20日(火)15時10分
キャスリーン・マクラフリン

環境激変 広東省恵州のテレビ製造工場 Siu Chiu-Reuters

 中国の賃金上昇が止まらない。製造業の中心地である広東省では来年1月、前回から1年もたたないうちに最低賃金が最大20%上がる。

 もっとも、賃金の引き上げは労働市場がハイエンド産業へと移行する原動力にもなる。中国が世界に安価な労働力を提供する時代は終わりつつある。より安い生産を目指すメーカーは拠点を中国内陸部やバングラデシュ、カンボジアに移し始めた。

 広東省ではこの数年、原材料価格の高騰で何千もの小さな工場が次々と閉鎖された。工場主らはこの不景気に追い打ちをかけるような賃金アップに抗議の声を上げている。

 一方、労働組合は急速なインフレへの対応や、政府が目標とする「ローエンド製造業からの脱却」のために賃上げは必要だと、もっともな主張をぶつける。

 だが既にコスト高に苦しんでいる小規模企業の経営者にとっては死活問題だ。「どうすりゃいいんだ。ビジネス環境がすっかり変わってしまった」と、ある陶器工場のオーナーは言う。

 昨年の賃金引き上げを機に、広東省の工場の30%が減産または廃業に陥ったという。さらなる賃上げは「とどめの一撃」になりかねない。

GlobalPost.com特約

[2011年11月23日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

7月企業向けサービス価格、前年比2.9%上昇 前月

ワールド

米政権、EUデジタルサービス法関係当局者に制裁検討

ワールド

米商務省、前政権の半導体研究資金最大74億ドルを傘

ビジネス

低水準の中立金利、データが継続示唆=NY連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中