最新記事

ヨーロッパ

EUの温暖化対策が貿易紛争の火種に

EU域内を離着陸しCO2を排出する航空機から課徴金を取れ——EUのそんな一方的な決定にアメリカや中国が猛反発

2011年10月3日(月)14時58分
テリ・シュルツ

汚染者負担の原則 ETSの導入でEUの航空会社は年間で43億ドルの費用増になりそう Stefan Wermuth-Reuters

 来年1月1日から、EU域内を離着陸する航空機が排出する二酸化炭素に対し、課徴金を課す──EUは先ごろそう発表した。多くの産業で05年から実施されている排出量取引制度(ETS)を航空業界にも広げる動きだ。

 EUの行政執行機関である欧州委員会のコニー・ヘデゴーは、「汚染者負担の原則」を空にも適用すべきだと主張。「航空機利用者にも負担を求めなければ、一般市民からの協力は得られない」

 航空業界はこれまで、ETSに組み込まれないよう抵抗してきた。EUの一方的なやり方には、各国からも批判が噴出。特にアメリカや中国、インド、ロシアは声高に異議を唱えている。

 EUが国際社会の合意なしに課徴金を決めている点や、EU域内だけでなく飛行距離全体が対象となる点、課徴金が温暖化対策費ではなくEUの財源になる点などが批判を招いている。

 米下院運輸委員会は、米航空会社がEUのETSに参加することを禁ずる法案を作成。アメリカの主権に対する干渉であり、温暖化対策に関する国際社会の合意形成を阻むと非難している。

 一方、EUの航空各社は非EU国が不参加となれば、自分たちだけが負担を負わされて競争力が低下してしまうことを危惧している。

GlobalPost.com特約

[2011年8月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウォルマート、8―10月期は予想上回る 通期見通

ビジネス

米9月雇用11.9万人増で底堅さ示唆、失業率4年ぶ

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中