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ヨーロッパ経済

IMFの性スキャンダルで欧州に大激震

2011年5月17日(火)17時30分
トーマス・ムチャ

経済危機でIMFの存在価値を高めた手腕

 ストロスカーンの在職中にグローバル経済はこの数十年で最も深刻な事態に陥ったが、IMFはグローバルな舞台における役割を着実に広げてきた。それを示す数字を一つだけ挙げよう。07年にわずか11億ドルだったIMFの緊急融資は、2010年には917億ドルという記録的な額に膨れ上がった。

「経済危機はIMFにとってチャンスだった」と、05〜06年にIMFの経済研究部門を率いたエスワー・プラサドは今年1月にブルームバーグに語った。「ストロスカーンは野心的な戦略によって、困難極まりない時期をチャンスに変えた」

 今回のスキャンダルを受けて、IMFは元JPモルガン勤務でアメリカ出身のジョン・リプスキーを専務理事代行に任命した。だが今の欧州経済の脆弱さを考えれば、ストロスカーンの穴を埋めるのは簡単ではない。

「前例がない事態だ」と、元IMFエコノミストのジョンソンは語る。「何のロードマップもない。短期的な対応は職員で乗り切れるが、1週間以上が過ぎてより広範な戦略を考える弾になると、すべてが未知数になる」

 ヨーロッパ諸国の危機は続く。EUのユーロ圏17カ国は16日、財務相会合を開き、ギリシャとポルトガルへの追加支援と両国が今後取るべきステップについて話し合った。ユーロ圏に注入された救済資金の3分の1を、IMFによる融資が占める中、ストロスカーン不在の意味は、今後ますます大きくなる。

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