最新記事

欧州経済

大詰めのポルトガル債務危機

来月の債務借り換えを前にして、23日にも政権崩壊の危機。財政破綻はもはや不可避?

2011年3月23日(水)16時32分

緊縮か破綻か ソクラテス首相の緊縮策は野党の反対に合って大ピンチ Hugo Correia-Reuters

 ポルトガルでは23日にも政権が崩壊するかもしれない、とアナリストたちは言う。ジョゼ・ソクラテス首相が議会に提示していた緊縮財政策に、野党が反対する意向を示したからだ。ポルトガル議会は23日に採決を行う。

 これはポルトガルの債務返済が滞りEU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)の支援を受ける事態を避けるための法案だが、社会民主党など主要野党はこの一段の削減策に反対票を投じる意向。もし法案が通らなければ、ポルトガルは解散総選挙と国際金融支援を両方一度に経験することになる可能性がある。

 事態は切迫している。ポルトガルは来月、42億3000万ユーロ(60億2000万ドル)の政府債務を借り替える必要がある。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、市場は選挙後の経済政策の方向性が不透明なことに不信感を抱いており、今でも高いポルトガルの借り入れ金利はさらに上昇する可能性が高いという。

 債務支払い能力を投資家に示すため、ポルトガルは増税と大幅な支出削減にも着手している。

緊縮財政で景気悪化恐れる野党

 JPモルガン証券のエコノミスト、ニコラ・マイがブルームバーグに語ったところによると、少数与党・社会党を率いるソクラテスは、野党との妥協点を見出すために、ECB(欧州中央銀行)や欧州委員会の助言も受けて財政緊縮策を作ったが、「野党はその手には乗らないという姿勢のようだ」。

 野党側は、新たな緊縮策はポルトガルの景気をさらに悪化させると主張している。

「今週、政権崩壊にいたる可能性は高い。だとすれば、遠からず欧州金融安定化基金の世話になる日がくるだろう」と、マイは言う。

 EU首脳は24日、ユーロ圏の政府債務危機解消のための「グランド・バーゲン(大きな合意)」をまとめるために会合を開くが、関心はもっぱらポルトガル危機に集まることになりそうだ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、ウクライナ支援で2案提示 ロ凍結資産活用もし

ワールド

トランプ政権、ニューオーリンズで不法移民取り締まり

ビジネス

米9月製造業生産は横ばい、輸入関税の影響で抑制続く

ワールド

イスラエル、新たに遺体受け取り ラファ検問所近く開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 9
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中