最新記事

テクノロジー

史上最も孤独な「ツイッター世代」

他者との関わりをメールやSNSに頼ってきたせいで共感能力が低い新世代と、どう共存していくか

2011年1月12日(水)17時40分
ジェシカ・ベネット

一緒だけど孤独 面と向かうと、携帯のほうへ視線を逸らさずにいられない人も

 あなたは1日に何回メールチェックをするだろう? 朝起きた時? 夜寝る前? それとも日に何回も? 朝起きて最初に目にするのも就寝前の最後に目にするのも、メールの着信を知らせる携帯電話やスマートフォンの赤い点滅ランプ、という生活はごく普通だろう。いくらうっとおしくても、ほとんどの人がメールなしには生きられない。

 そのうえ、ツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアをチェックするのも習慣になっている。私たちの生活を楽にしてくれるはずの技術が、いちばん時間を食う仕事になっている。平均的な十代は1日に7時間以上をデジタル機器の使用に費やしている。それも友人と携帯メールをやり取りする1時間を別にして、だ。

 ハイテク機器の利点と言えばもちろん、他者とのつながりを生んでくれること。メールなら外出中も返事ができるし、実際、私たちは過去のどの時代よりも多くの人々と長時間接触している。でももしかしたら、現代人はどの時代の人よりも孤独なのではないか? それがマサチューセッツ工科大学のシェリー・ターケル教授が、新著『アローン・トゥゲザー(一緒だけど孤独)』で問いかけたテーマだ。同書は、テクノロジーと人間との変わりゆく関係を鮮やかに描き出している。

 ターケルは15年近くに及ぶ研究と数百人へのインタビューに基づき、テクノロジーが「親密さ」と「孤独」に対する私たちの意識をどう変えたかを明らかにしている。そしてハイテクが生んだ表面的な関係を、いつまでも続く精神的つながりと受け止めることの危険性を説く。

人間関係は「破滅的な事態」に

 電話をかけることに恐怖を感じる高校生や、ロボットおもちゃのペットの「死」に動揺する小学生についてターケルは語っている。もしも自分と娘が遠くから連絡を取り合う場合に携帯メールだけを使ったら、娘は40年後に親子関係をどう記憶しているだろう、と考えをめぐらす。しかし心理学者であるタークルにとって最大の懸念は、こうした表面的なつながりが人間の発達面にどんな影響を及ぼすかだ。

「遠くにいる人に携帯メールを送る。無機物を経由して、1人の時も誰かと一緒にいると感じる。それでいて実際に誰かといる時はひっきりなしに携帯機器を使って、孤独な状況に自らを置く。人間関係で何が重要なのかがわからなくなる『破滅的な事態』と言える」と、ターケルは指摘する。

 しかしどんなに欠点があろうと、テクノロジーのおかげで生活がずいぶん楽になっていることは確かだ。例えば、少ない時間でより多くの人とコミュニケーションできる。要点のみの会話だけで、無駄な世間話をしなくても許される。新しいセラピーも可能になる。今では高齢者の心を癒す動物ロボットや介護補助に使われるロボット、オタク受けしそうな女性型ロボットも登場している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中