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ジョブズがiPhone4のミスを認めるとき

2010年7月16日(金)18時11分
ファーハッド・マンジョー(オンライン雑誌「スレート」のテクノロジー担当コラムニスト)

 とはいえ私は返品はしたくない。iPhoneは何より優れたインターネット機器だと思う。だが私はバカではないし、こうした問題は私の気のせいではない、とアップルに認めてもらう必要はある。

 比較的まともな握り方をしたときに電波が切れないようアンテナを設計すべきだったと認めてほしい。もちろんこれは大きなミスではないし、すべての人にこの問題が生じているわけではないようだ。それなりに簡単かつ安上がりな解決法もある(コンシューマーリポートはアンテナ部分をダクトテープで覆うという対策を提案している)。

ミスを認めない企業を信頼できるか

 だがそれでもミスはミスで、アップルにはそう認める義務がある。「申し訳ない。我々は失態を犯した。だから次のように対処する」と言うだけで十分だ。

 アップルにとって非を認めるということには大きな意味がある。同社はほかのどのハイテク企業より完璧を目指して奮闘してきたし、何年にもわたって驚くほどの頻度でその目標を達成してきた。

 パワーマックG4キューブ、08年のMobileMe、iPod Hi-Fiなど、過去10年のアップルの失敗は数えるほどしかない。現在の傑出したアップルを築いたのはヒット商品の積み重ね。見たこともない製品のために長い列ができ、予約が殺到するのはアップルの製品だけだ。

 だがミスを認めたがらない姿勢がその地位を脅かしている。アップルがいかに「信者」たちを悩ませ続けようが、iPhone4の売り上げが急落することはないだろう。だがあらゆる証拠に背を向けて、明白な問題を単なる錯覚だと言い張る企業をどう信用しろと言うのか。

 アップルが次に携帯電話やタブレット型コンピューター、そのほかの機器を発売したとき、だれもが今回の騒動を思い出すだろう。そしてまだ見ぬ製品を買う行列に並ぶ前に、もう一度考え直すだろう。

 ネット上にはアップルはiPhone4をリコールすべきという主張もある。たとえそれが高くついても(専門家の見積もりでは数十億ドルに達する)、間違いなく顧客の信頼を生むことができるというのだ。個人的にはアップルがそこまでするとは思えないし、そうすべきとも思わない。まだ発売から30日たっておらず、本当にこの携帯電話が気に入らなければ無料で返品もできる。

 その代わりアップルには無料で「バンパー」を提供するよう提案したい。だがそれだけでなく、もっと幅広く間違いを認めるべきだ。アップルは今回の問題への対応がまずかったと認め、電波問題に真剣に取り組むと発表する必要がある。

 長期にわたる誓約もするべきだ。次にインターネット上でアップルに関する問題が噴出しても、お決まりの守りの姿勢は取らない、と。もしアップルがiPhoneユーザーを馬鹿にし続ければ----購入者を見下すというのがいかに贅沢なことか、と思い知る日がいずれやって来る。

Slate特約)

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