Picture Power

LGBTQの親を持つ子供たち

THE CHILDREN OF LGBTQ PARENTS

Photographs by GABRIELA HERMAN

LGBTQの親を持つ子供たち

THE CHILDREN OF LGBTQ PARENTS

Photographs by GABRIELA HERMAN

<Jaz> 父が亡くなったのは私が2歳の頃。両親が離婚しようとしていた時期でもあった。母は精神的な問題を抱えるようになり、同性愛者と自覚していないことが問題の原因だと気付いたんだと思う。やがてレズビアンのチャットルームで今の妻タミーに出会った。大きな転機はたしか14歳のとき。3人でテーマパークに行き、タミーに「たまにはママって呼んでもいい?」と聞いた。彼女が泣きだして、それがすごく愛しかった。

私の母は同性愛者。そう言えるようになるまで、長い時間がかかった。

20年以上前、私が高校生だった頃に母はカミングアウトした。間もなく父と別れ、最終的には長年のパートナーだった女性とマサチューセッツ州で結婚した。

私にすれば衝撃的で、海外留学中の1年間はほとんど母と口を利かなかった。特に同級生には隠さなくてはと思ったし、絆の強い家族の中でもその話題はタブーだった。

私は29歳だった7年前、肖像写真プロジェクト「キッズ」を始めた。同じような境遇の人の話を聞き、写真を撮るためだ。私は世界中のいろいろな都市に住んだが、同性愛の親に育てられた人に会ったことはなかった。

LGBTQ(性的少数者)の親や保護者を持つ人々を支援する団体COLAGEを教えてくれたのは妹だ。ニューヨークのイーストビレッジのアパートで、若者たちが家族のカミングアウトの話をするのを聞いた夜から、撮影した子供は100人近く。彼らに会うことは私自身のセラピーにもなった。

シンクタンクのウィリアムズ研究所の推計では、アメリカで同性愛の親を持つ子供は少なくとも600万人。私は困難を経験したが、次の世代は違うはず。LGBTQへの差別なんて、歴史の中の話になるだろう。

ガブリエラ・ハーマン(写真家)


Photographs by Gabriela Herman from the book "The Kids: The Children of LGBTQ Parents in the USA" published by The New Press

撮影:ガブリエラ・ハーマン
米ニューヨークを拠点として、旅、食、ライフスタイルをテーマの広告写真や、ニューヨーク・タイムズ、ワイアードなどの新聞・雑誌を中心に活躍している。本作は、新刊写真集『The Kids ― The Children of LGBTQ Parents in the USA 』からの抜粋

[本誌2017年10月24日号掲載]



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