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シリーズ日本再発見

日本の接客業に求められるサービスには「身だしなみ」も含まれる

2019年11月28日(木)16時45分
高野智宏

Satoshi-K-iStock.

<飲食店からアパレル店、美容室まで、客から厳しい視線が注がれるのはサービスの内容や接客態度だけではない>

小売業界に長らく根付く「お客様は神様です」という意識なのか、あるいは、先のラグビー・ワールドカップで海外が称賛した「おもてなし」の精神なのか、その理由はともかく、日本の接客業では高いレベルのサービスが求められている。

チップがモチベーションとなっている欧米の接客業とは違い、そうした直接的な見返りのない日本流のサービスは、ややもすると過剰ではないかと見る向きもある。

しかし、アパレル店や美容室では店員が頭を下げて客を1ブロック先まで見送り、居酒屋など低価格帯の飲食店でも水やおしぼりを無料で提供するなど、日本では商品同様にサービスが重視されていることは事実。私たち客の側も、無意識にそれを求めていることに異論はないだろう。

そんな、日本人のサービスに対する意識の高さを表すアンケート結果がある。リクルートライフスタイルが飲食店向けに提供する予約台帳アプリ「レストランボード」が、2017年に20〜50代の男女1000人に対して行った「再来したいと思える飲食店に関する調査」だ。

「メニュー・味の良さ」以外にまた行きたいと思う理由を問う質問では、1位の「雰囲気が好きだから」(73.5%)に続き、「サービスが良いから」(24.9%)が2位に。他にも「自分の好みを分かってくれいているから」や「名前を覚えてくれているから」など、接客やサービスに関連する回答が多数挙げられる結果となった。

一方、別の質問では全体の78%が「二度と訪れたくないと思った経験がある」と答えているが、その理由として、67.2%が「店員の態度が悪かった(疲れていた)」と回答。理由の1位、「味が美味しくなかった」(67.7%)とほぼ同率の高いパーセンテージだ。

さらには、「店員が忙しそうで、呼んでも来てくれなかった」や「予約の連絡をしていたのに、予約が取れていなかった」、「事前に食べられないものを伝えていたのに、その食材を使った料理が出てきてしまった」など、こちらの質問でも大半が広い意味でサービス内容に関する回答だった。

清潔さ、機能性、そして「お洒落と身だしなみは違う」

客からの厳しい視線は、サービス内容や接客態度だけに注がれるわけではない。それと同等かもしくはそれ以上に、身だしなみにも厳しい視線が向けられている。

アパレル業界の求人サイト「アパレルクローゼット」が2017年、10〜30代の女性を対象に行ったアパレル店員の身だしなみに関するアンケート調査では、26.1%が「アパレル店員の身だしなみにマイナスイメージを持ったことがある」と回答している。

具体的には「しわしわの服だった」や「着こなしが雑だった」といった服装に関するもののほか、「ネイルが剥げていた」、「つけ爪が長かったので、服を傷つけそうだと思った」など、ネイルに関する回答もちらほら。となれば、服装以外にメイクやネイルもチェックされていると考えてよいだろう。

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