最新記事
シリーズ日本再発見

ヨシダナギ、気鋭のフォトグラファーの知られざる「本性」

2018年04月06日(金)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『ヨシダナギの拾われる力』より

<少数民族と打ち解けるため、彼らと「同じ格好」になり、ネットやテレビで大きな話題に――。注目を集めるフォトグラファー、ヨシダナギの新しい一面。写真は「好きじゃない」から仕事にしたという彼女の「拾われる力」とは>

「アフリカの少数民族」と聞いて、どんなイメージを抱くだろうか。そもそもアフリカ自体が、日本からはまだまだ遠い異国の大地。大自然の中で果敢に生きる動物たちを思い浮かべる人もいるだろうが、貧困、内戦、エイズ......といったネガティブなイメージを抱く人も多いはずだ。

そんなアフリカでちょっとした有名人になっている日本人がいる。彼女はこれまでに世界40カ国以上を訪れ、200余りの少数民族の姿を写真に収めてきた。自分の写真で、ひとりでも多くの人に彼らの格好良さを伝えたい──そう語るのは、今最も注目を集めるフォトグラファー、ヨシダナギだ。

少数民族と打ち解けるために、彼女は彼らと「同じ格好」になる。それがネットやテレビで大きな話題となった。今では全国各地で写真展やトークショーが開催され、入場制限や立ち見も出るほどの人気ぶりだが、なぜ、ヨシダナギはそこまで人々を惹きつけるのか。

著書『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)からは、メディアを通して知る姿とは違った、新しいヨシダナギの一面が見えてくる。

写真を続ける理由は「好きじゃないから」

「アフリカの妖精」ことエチオピアの少数民族・スリ族を撮影した初の写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)及び著書『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)で第48回講談社出版文化賞(写真賞)を受賞したほか、雑誌「Pen」が主催する「Pen クリエイター・アワード2017」にも選出されるなど、ヨシダナギの写真と活動は高く評価されている。

だが何よりも、今の彼女を形成している半生と、その中で育まれた独特の考え方とが、多くの人の共感を呼び、また同時に勇気を与えている。

それを端的に表すエピソードが、フォトグラファーになったきっかけだ。ヨシダナギの写真は白飛びしていたり、画質が粗かったり、なかにはピントが合っていないものすらあるが、実は彼女は、写真の勉強をしていない。学校に通っていないというレベルではなく、独学すらほとんどしていない。

なぜなら「写真は好きではないし、カメラに興味もない」からだと言い切る。アフリカ人の格好良さを伝える手段として選んだのが、たまたま写真だった。それがネットで話題になり、テレビに取り上げられ、気づけば「フォトグラファー」という肩書きをもらっていた。


世の中には「好きなことを仕事にしなさい」という風潮があるせいか、「好きなことを仕事にしたいのにできない」と、焦っている人たちをよく見かける。もちろん、自分の嫌いなことを仕事にする必要はないけれど、必ずしも好きなことでなくてもいいと思う。「嫌いではないから、やってみてもいいかな」くらいに思える仕事を選んでみてもいいと思う。(124ページ)

人気フォトグラファーとなった今でも、「写真が好きじゃなくて良かった」と彼女は言う。おかげで下手と叩かれても悔しくなく、モチベーションを維持できる。興味がないものを勉強しても上達しないと分かっているため努力もしないし、いつでもやめられる。それこそが自分の強みなのだと。

yoshidanagibook180406-2.jpg

『ヨシダナギの拾われる力』より

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ドイツ、イスラエルへの武器輸出停止を解除へ 停戦順

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 150億ドル

ビジネス

ベゾス氏、製造業・航空宇宙向けAI開発新興企業の共

ワールド

米FEMA局長代行が退任、在職わずか6カ月 災害対
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中