コラム

世界報道写真大賞を狙え----コンテスト直前ゼミ

2010年12月21日(火)10時49分


 世界中のプロのドキュメンタリー写真家、フォトジャーナリストが「世界報道写真(World Press Photo)財団に写真送らなきゃ----クリスマスまでに終わらせるぞ」と思いつつ、皆が1月の〆切直前まで放置する。いや、今年は30分で済ませて楽しいお正月を迎えよう。ここではより悩みがちな組み写真(ストーリー)部門について触れる。

 今できる最大の対策は、エディット(写真選び)は厳格に

 私が参加した今年2月の最終審査過程でよく使われた言葉は「十分強くはない」----落選の瞬間だ。私自身少し意外な体験は、たとえ「十分強い」写真が組み写真としてずらっと並んでいたとしても1枚の「十分強くはない」写真が紛れているのを目にしただけでストーリー全体の心証が「十分強くはない」に変化したことが度々あったことだ。フォトエディターとしての日常のエディットにおいては、掲載しない写真として1枚抜くだけであるが、ハイレベルなコンテストではその1枚が致命的になってしまう。逆に「あの一枚」がなければ次の段階に進んだ作品がいくつもあったということだ。

 ならばエディットは具体的にどうしたらよいのか。世界報道写真コンテストの事務局長として2009年から毎年審査過程をつぶさに見ているニューヨーク・タイムス紙パリ支局欧州フォトコーディネーターのダフネ・アングルに聞いた。美しき生き字引のアドバイスは:


1、写真の並びはストーリーが伝わるような順序に整えること

2、1枚1枚が必ず強い写真でなければならない。同じ状況から2枚以上の写真は不要

3、各写真に細心の注意を払いジャーナリスティックに説明を入れること

4、作品は複数送ることができるが、同じテーマで複数送るべきではない。なぜなら一番強い写真が決められなくなる

5、カテゴリー分けに悩むことはない。ある段階まで到達すれば、審査員が一番ふさわしいカテゴリーに切り替えてくれる

とのことだ。

 最終2次審査のうちの初期段階ではキャプションは読まれずにスライドショーのみでの審査が行われることを想定して順序を決めること。間違っても撮影時の写真番号の並びのままデータを送ったりしないように。1作品につき12枚まで応募できるが、12枚必須というわけではなく、それ以下の枚数でストーリーが完成されるのであれば十分----余計なカットを入れないことだ。撮影現場での体験が写真選びに影響することが多いことは誰もが経験することだが、自分にとってかけがえのない1枚であったとしても、他の機会を待つべき1枚なのか、コンテストに出すべきものなのかもう一度熟考してほしい。

 入賞作品は世界数十カ国で展示され、現場の事実をより多くの人に伝えるチャンスが広がる。

 皆様のご健闘をお祈りします。

世界報道写真財団(アムステルダム/オランダ)
世界報道写真コンテスト2011/エントリーサイト
*応募要領等は財団のサイトを各自でよくお読み下さい

 ――編集部・片岡英子(世界報道写真コンテスト2010審査員)

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story