コラム

中国経済の足を引っ張る「キョンシー企業」を退治せよ

2016年01月21日(木)18時26分

 中小企業を整理したところで生産能力の過剰はたいして改善しませんが、過去20年は高度成長が続いたので、一時赤字になっても、何年か持ちこたえているうちに、好景気の波が来てキョンシー企業は生き返り、さらに民間企業が新規参入しました。新規参入した民間企業は、国有キョンシー企業より経営効率が高いため、より急速に発展し、その結果、産業全体の平均的な効率は向上してきたのです。

 しかし、今後は中成長が「新常態」だとすると、生産能力過剰を解消するような好景気の波はもはや期待できないでしょう。すると、キョンシー企業を退治すると称して中小民間企業をつぶして国有大企業を温存すれば、産業の効率をむしろ下げてしまう恐れがあります。キョンシー企業を退治せよ、というのはたやすいのですが、映画と違って現実の世界では誰がキョンシーかを判別するのが難しいです。今の流れで行くと、中国政府は一時的にケガをしている若者達をキョンシーとして墓場に追いやり、年老いた巨大なキョンシーたちを温存する恐れがあります。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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