コラム

安くて快適な「白タク」配車サービス

2015年12月07日(月)19時34分

 2015年第2四半期には中国の白タク配車サービスを利用しているユーザーのうち、「滴滴快的」に登録している人が82.3%、「優歩」に登録している人が14.9%、「神州専車」に登録しているが10.7%となっています。「滴滴快的」は先行してタクシー配車サービスを始めていたため、多くの人が登録しています。「優歩」は中国本土でサービスが行われているのがまだ20都市に留まっていること、「神州専車」は2015年に参入したばかりなので、登録している人はまだ多くないですが、今後急成長する可能性があります。

 法的にはほとんど「黒」であるこのサービスが今後どうなるかは不透明ですが、ここまで拡大し、内外の有力企業が投資していて、人々の需要にも応えているのだから、営業できなくなることはないだろうと大方の関係者は見ています。

 さて、日本でも安倍首相が今年10月に過疎地などでの白タクの解禁を検討するよう指示したそうです。ウーバーは日本にも進出していますが、国土交通省の規制が強いため、目下のところ客からの配車要請をタクシー会社に取り次ぐサービスを東京の一部で展開する程度に留まっています。

 ウーバーはアメリカと中国では急成長していますが、日本では「海外で既存のタクシーとの間で摩擦を起こしている」といったネガティブな情報ぐらいしか伝えられていません。たしかに日本ではタクシーが不足しているという感じはしませんし、既存のタクシーでも十分快適なので、中国におけるほど白タク配車サービスが熱烈に歓迎される余地は少ないかもしれません。

 しかし、車と時間に余裕があるドライバーと車に乗りたい需要とをITを使って結びつけるというアイディアは素直に面白いと思います。起きうる問題をあげつらうばかりではなく、そうしたビジネスが生まれることで、想像もしなかった需要が掘り起こされる可能性に賭けてみてもいいのではないでしょうか。「転ばぬ先の杖」ばかり多くてはイノベーションも萎縮してしまうことでしょう。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米特使・プーチン氏会談、「まずまず良い」協議だった

ワールド

ドイツ、防空システム「アロー」導入 ロシアの脅威に

ビジネス

NY外為市場=ユーロ、対ドルで約7週間ぶり高値 好

ビジネス

米国株式市場=続伸、指標受け利下げ観測継続 マイク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story