最新記事

メルマガ限定ページ

パスポートの性別欄に「第3の性」

2017年04月26日(水)18時30分

これまで女性と男性しか選べなかった英パスポートが変わるか MILAN LIPOWSKI/ISTOCKPHOTO

<トランスジェンダーに朗報? イギリス政府がパスポートの性別欄に男性でも女性でもない第3の性「X」の導入を検討中>

LGBT(ゲイやトランスジェンダーなどの性的少数者)の権利向上をめぐる新たな闘いが、意外なところで始まっている。パスポートの性別欄だ。

イギリス政府はLGBTのための人権グループの訴えを受けて、パスポートの性別上の区分に「第3の性」を加えるかどうかを検討していると明言した。

生まれたときの性と自己認識としての性が一致しないトランスジェンダーの人などの場合、外国に出掛ける際にパスポートに記載された性別と外見が異なるという理由で飛行機への搭乗を拒否されるケースが少なくない。そのためイギリス国内の65万人強のLGBTコミュニティーでは、外国旅行へのためらいが広がっている。

BBCの報道によれば、LGBTのための人権団体ストーンウォールは、パスポートの性別欄に女性(F)でも男性(M)でもない「X」という区分を設ければ、こうした人々の苦しみを軽減できると主張している。この変更は、肉体的な特徴が女性にも男性にも当てはまらないインターセックスの人々にも恩恵をもたらすと、彼らは言う。

「トランスジェンダーの中には、こうした性別区分を自分のアイデンティティー証明と考える人々もいる」と、ストーンウォールの顧問団の1人であるタラ・ストーンはBBCに語った。

ストーンウォールが変えようとしているのはパスポートの性別欄だけではない。彼らは170人のトランスジェンダーと、トランスジェンダーの子供の親たちから広範な意見を聞き取り、今後数カ月の運動目標「変化のビジョン」を策定した。

彼らの主要目標の1つは、イギリスの性別認定法を改正し、法的な性別認定の際に医学的証拠を提出しなくてもいいようにすること。性的アイデンティティーも「保護される特性」に含めるべく、平等法の改正も目指している。

こうした機運はイギリスだけでなく、世界各地に広がっている。既にドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタンの7カ国では、パスポートの性別欄で「第3の性」を選択することができる。

オーストラリアでは11年の法改正以前は、性転換手術を受けていない人々がパスポートの性別を変更することはできなかった。だが今では、インターセックスの人々は性別欄で「X」を選べる。トランスジェンダーの人々は医師の診断書があれば、性別欄で男性か女性のどちらかの性を選べる。

MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中