コラム

就任1カ月のフランス首相、早くも辞任...マクロンに残された「賭け」が「ルペン大統領」に道を開く?

2025年10月08日(水)18時37分

「ルペン大統領」に道を開く危険なギャンブル

アルジェリア危機でシャルル・ド・ゴールが復活、首相任免権、議会解散権、国民投票発議権、緊急措置発動権を大統領に与える憲法改正を行った。「第五共和政」の大統領は国民も議会も解任できず「共和制の君主」と呼ばれるほど強い権限を持ち、安定した大統領制が確立された。

大統領と議会多数派が異なる党派で、首相を敵対勢力から任命せざるを得ない「コアビタシオン」は第五共和政でも見られたが、首相が議会多数派を代表、大統領が外交・安全保障を担当する機能的な二元体制が保たれた。

マクロン氏の時代は右と左の二大ブロックが崩れ、中道・右派・極右・左派の分裂が進み、第四共和政の政治的混乱の時代に逆戻りした。「政治のねじれ」を解消するには大統領選と国民議会選を同時に行うしかないが、それは「ルペン大統領」に道を開く危険なギャンブルとなる。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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