コラム

ガザ攻撃めぐり、欧米で「親イスラエルvs親パレスチナ」の対立激化...EUは難民危機の再来に戦々恐々

2023年10月17日(火)19時49分
ダブリンでの親パレスチナ派のデモ

アイルランドのダブリンで行われた親パレスチナ派のデモ(10月14日) Clodagh Kilcoyne-Reuters

<米大学ではイスラエル人学生が襲撃されたとみられる事件も。パレスチナとイスラエル、どちらを擁護するかで西側の反応が分裂している>

[ロンドン発]パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム武装組織ハマスの奇襲で火を吹いたイスラエル・ハマス戦争の死者は17日時点でイスラエル側1400人以上、ガザ空爆で2700人近くにのぼっている。199人を人質に取られた上、焼き討ち、斬首、射殺、レイプなど残酷な被害を受けたイスラエルは自衛権を主張するが、西側の反応は分裂している。

イスラエルがガザから撤退したのは2005年末。06年のパレスチナ立法評議会選挙でハマスがパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハに圧勝。両派は連立政権を樹立し、ハマス指導者イスマイル・ハニヤが首相に就任した。しかしガザでハマスとファタハの衝突は激化し07年ハマスがガザを、ファタハ主導の緊急内閣がヨルダン川西岸地区を掌握した。

国連総会決議を受けイスラエルは先の大戦後の1948年建国を宣言したが、今もイラン、パレスチナのハマスやイスラム聖戦、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラはイスラエルの生存権を認めていない。「イスラエル破壊とイスラム国家樹立を目標に掲げる」(英BBC放送)ハマスの攻撃と、イスラエルの報復は何度かの停戦を経て繰り返されてきた。

イスラエルの安全保障はガザ封鎖と空爆、鉄壁のはずだった防空システム「アイアン・ドーム」を軸に成り立ってきたが、今回、ハマスの大規模な陸海空統合作戦で完全に破綻した。空爆やイスラエルのガザ侵攻はハマスを徹底的に叩くため容赦のないものになり、一般市民の巻き添え被害拡大が懸念される。

ハマスはガザで戦闘訓練を実施

米英、欧州連合(EU)はハマスをテロ組織とみなす。英国政府は「イスラエルを標的にする無差別ロケット弾、迫撃砲攻撃、襲撃が行われている。21年5月には4000発以上のロケット弾がイスラエルに向け無差別に発射され、子ども2人を含む民間人が死亡した。ハマスはガザのサマーキャンプで未成年者を含むグループの戦闘訓練を行っている」と指摘する。

英国のリシ・スナク首相は14日、「英国はテロに対して常に同盟国とともに立ち向かう。イスラエルの罪なき犠牲者に対するハマスのテロ攻撃を受け、地域の安定を強化し、さらなるエスカレートを防ぎ、人道的努力を支援するために、世界クラスのわが国の軍隊を派遣した」とX(旧ツイッター)に投稿した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-米、ロ産石油輸入巡り対中関税課さず 欧州の行

ワールド

米中、TikTok巡り枠組み合意 首脳が19日の電

ワールド

イスラエルのガザ市攻撃「居住できなくする目的」、国

ワールド

米英、100億ドル超の経済協定発表へ トランプ氏訪
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story