コラム

託児費用の無償化を一気に拡大...「育児支援」改革で、英経済は救われるか?

2023年03月18日(土)19時06分

スナク首相とハント財務相の反転攻勢

「この改革により就学前の育児支援の80%(現在は50%弱)の価格を政府が管理することになる。保育事業者への助成率が低過ぎると市場から完全に撤退する恐れもある。そうなると無償育児支援の拡大は空約束に終わり、保護者が保育の場を見つけることがさらに難しくなるかもしれない」とIFSは懸念を示す。

保育事業者への財政的圧力が高まれば、保育の質は低下する。無償で育児支援を受けられる権利を大幅に拡大し保育事業者の収入を押し下げると、子どもの成長より親の雇用を優先させることになりかねない。スナク首相とハント財務相はまだ詳細な道筋を示していないが、16年のEU国民投票以来続いてきた悪酔い政治を一掃する真面目な姿勢を押し出した。

25年1月までに行われる次期総選挙に向けた世論調査で与党・保守党は最大野党・労働党に大幅なリードを許すが、その差は最大29ポイントから最小11ポイントにまで縮まった。EUからの強硬離脱を主導した保守党内強硬右派の「自爆的な反乱」が起きない限り、スナク首相とハント財務相の反転攻勢はまだまだ続くような気がする。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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