コラム

「環境ポピュリスト」小泉進次郎は、楽しくもセクシーでもない温暖化対策の現実を語れ

2019年09月24日(火)16時25分

「しかし実際には大規模な重金属汚染を引き起こす石炭火力発電に向けられた方が良かったのかもしれない。催奇形性および変異原性物質を含む本当に有毒な化学物質が石炭プラントからは出ている。興味深いことに、核汚染が先天性異常を引き起こすという証拠はほとんどない」

「単に事実と数字で人々を攻めようとするだけなら、跳ね返されるだろう。私は経験主義者で科学的背景を持っている。事実と数字は非常に重要だが、人々の心に訴える説得力のあるナラティブの中にそれらを埋め込まない限り全く効果がない」

「真に邪悪なエネルギー供給は原子力として、石炭火力を見逃すナラティブはあらゆる点で非常に間違っている。福島原発事故で直接の死者がどれだけ出たのだろう。中国の炭鉱だけで週42人が死んでいく。その後、大気汚染を引き起こし、石炭火力による大気汚染で年数十万人が世界中で死んでいる」

「気候変動では犠牲者の規模が数百万人、数千万人になる。何億人になるかは誰にも分からない。しかし膨大な数になるのは間違いない。人々は核に関して原発の廃炉問題を取り上げる。じゃあ旧炭鉱や油田の石油掘削装置はどうなのか。原発の廃炉と同じナラティブが求められるのではないか」

小泉氏の胸中には原発事故が引き裂いた地元コミュニティーと家族、連帯感、共同体意識がある。しかし、その一方で日本の石炭火力発電所が吐き出す温室効果ガスによる異常気象が破壊する途上国のコミュニティーにも思いを巡らせる必要があるだろう。

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※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。


プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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