コラム

アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年ぶりの「MMF」復活が意味することとは?

2025年12月25日(木)16時57分
三菱UFJが10年ぶりにMMFを復活

TORU HANAI-REUTERS

<三菱UFJフィナンシャル・グループが10年ぶりにMMFの販売を予定している。かつて当たり前の存在だったこの投資信託が復活することの背景には何があるのか?>

三菱UFJフィナンシャル・グループが、マネー・マネージメント・ファンド(MMF)を10年ぶりに復活させることが話題になっている。MMFの復活は日本経済が金利の存在する正常な世界に戻ったことを意味すると同時に、大規模緩和策による低金利で覆い隠されてきた多くの現実が顕在化することを意味している。

MMFは短期国債や社債など格付けの高い短期資産で運用する投資信託のことを指す。銀行預金と比較すると若干のリスクがあるものの、株式投資などと比較すると圧倒的に安全で、かつ銀行預金より高い利回りが期待できる。

かつては証券会社に口座を開設すると、株式などの購入に充当していない余剰資金を自動的にMMFに組み入れるといったサービスも当たり前に存在していた。


だが、アベノミクスによる大規模緩和策の実施以降、超低金利あるいはゼロ金利が当たり前となり、MMFは市場から姿を消してしまった。

市場や国民はこうした状態に慣れ切ってしまったため、もはや違和感を感じない人が多数派という状況だが、金利がないというのは資本主義社会においては異常事態であり、MMFの復活は金利が存在する当たり前の時代に戻ったことの象徴といってよいだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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