コラム

習近平「独裁」で、中国経済「成長の時代」は終焉へ...経済より重視するものとは?

2022年11月02日(水)17時37分
中国共産党大会

TINGSHU WANGーREUTERS

<イデオロギー色の強い習近平の派閥が党の全権を掌握。高度成長を支えた資本主義的な経済運営の終わりは、日本にも大きく影響する>

中国最大の政治イベントである5年に1度の中国共産党大会が閉幕し、異例とされる3期目の習近平(シー・チンピン)新体制がスタートした。政権が発足した2012年当初、指導部は習氏を中心とした派閥、胡錦濤前総書記を筆頭とする中国共産主義青年団(共青団)出身の派閥、そして江沢民元総書記を中心とした上海閥という3つの派閥で構成されていた。

だが、習氏はトップに就任するやいなや、江氏の影響力を排除し、その後は、習氏の派閥と、胡氏の後継者で首相を務める李克強(リー・コーチアン)氏の派閥との間で激しい権力闘争を展開してきた。

2期目となる5年前の党大会では、新たに選出された常務委員7人のうち、栗戦書(リー・チャンシュー)氏、王滬寧(ワン・フーニン)氏、趙楽際(チャオ・ローチー)氏という習氏に近い人物が3人加わり、もう1人の韓正(カン・チョン)氏が中立的な立場だったことから、李氏の派閥は汪洋(ワン・ヤン)氏だけになってしまった。

今回の党大会では、胡錦濤氏が長年、後継者として育成してきた胡春華(フー・チュンホア)副首相の常務委員入りが注目されていたものの、結局、胡氏の名前はなく、メンバーの全てが習氏に近い人物で固められた。

首相(国務院総理)就任が確実視される李強(リー・チアン)氏は、習氏の浙江省時代の部下であり、腹心の一人とされる。序列3位で留任となった趙楽際氏も、習氏が進めてきた反腐敗闘争を仕切ってきた人物であり、習氏に極めて近い。残り4人の常務委員も習氏の側近や近い人物で占められており、習氏による独裁体制が強化された形だ。

文革への逆行ほどでなくとも強い懸念が

習氏はこれまでの政権運営を通じ、江氏を後ろ盾とする国有企業を中心した経済利権を持つグループと、胡氏をリーダーとする党の実務官僚グループを排除してきたことになる。今回の党大会の結果としてイデオロギー色の強い習氏の派閥がほぼ全ての権力を掌握することとなり、一部の論者は、毛沢東時代への逆行を危惧している。

当時とは時代背景が異なるため、一説では2000万人の死者を出したとされる文化大革命のような事態になるとは考えにくい。だが、習氏が共同富裕という政治色の強いスローガンを打ち出していることを考えれば、統制的な経済運営が行われる可能性はそれなりに高いだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米9月雇用11.9万人増で底堅さ示唆、失業率4年ぶ

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2

ビジネス

さらなる利下げは金融安定リスクを招く=米クリーブラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story