コラム

GDP1.3%成長は喜べない、「数字のトリック」が意味する労働者に「厳しすぎる」現実

2022年03月01日(火)19時32分

もし今回と同様、価格への転嫁が実施されなかった場合、企業は減益や賃下げに追い込まれる可能性が高くなる。このシナリオどおりだとすると、全世界的に進むインフレに対して日本だけが特殊な動きを見せ、諸外国ほどには物価が上昇しないかもしれない。

企業が輸入価格の上昇を製品に転嫁しないということは、国民全員が貧しくなることとほぼイコールである。日本経済は慢性的な低賃金が続く一方、輸入品の価格は上昇するので、輸入依存度が高い製品の値段は上がっていくことになる。一般的にインフレが発生すると、賃金が上がってもさらに物価が上がるという悪循環となり、消費者にとっては困った事態といえる。

だが、製品価格に転嫁するということは、賃上げの原資を企業が捻出するということでもある。企業が製品価格への転嫁を諦めたということは、賃下げを意味しており、国民生活にとって良いことであるとは到底言えない。企業の利益も下がるので、株価も下がりやすくなり、公的年金の運用などにも影響が及ぶ可能性がある。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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