コラム

「世界最多の新型コロナ感染者数」それでもアメリカの覇権が続く理由

2020年04月01日(水)15時50分

アメリカでも株価暴落で、この3年間のトランプの「業績」は振り出しに戻った。新型コロナを受けて宣言した国家非常事態を悪用して大統領選挙の延期も持ち出しかねないところだが、ここ数日のトランプは精彩を欠く。これでは選挙に勝てないと、共和党議員と支持者たちが彼を見限り始める可能性がある。その場合、1期での退任という形で詰め腹を切らされるだろう。

それでもアメリカは、軍事・経済両面で図抜けた力を維持している。NATOの演習は規模が縮小されたが、欧州・中東・アジアの米軍は健在で、80兆円相当の軍事予算が支える。そして今回、世界中の金融機関やグローバル企業、各国政府が決済のためのドル資金を求めて狂奔。ドルレートの急上昇が示すように、世界経済におけるアメリカの存在感はダントツのままだ。

当面気を付けるべきは、米政府やFRB(連邦準備理事会)による多額の公的資金で崩落を免れた市場が、モラルハザードよろしく投機行動に狂奔することだ。

中世のペストと違い、今回は賃金も上がらず、インフレも起きず、それでもモノはあふれる。そんな時代がやって来るのか、それともドルの価値もゼロになって世界経済は瓦解するのか。

金(きん)だけは、しっかりと手放さないほうがいいかもしれない。

<2020年4月7日号掲載>

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2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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