コラム

「これはフェイク?」親中派が月額30ドルのAI動画生成サービスでデジタル影響工作していた

2023年02月10日(金)17時45分

日本語のデモンストレーション動画もあった。日本語話者に見えない人物にしゃべらせているのは同社のサービスでは自由にアバターと音声を組み合わせることができるのを見せたかったのかもしれない。

>>■■【動画】日本語のデモはこちらから

Synthesia社はヘイトスピーチ、誹謗中傷、偽情報などの問題となる内容を含む動画の作成を禁止しており、そのためのチェックを行っている。しかし、偽情報を検知するのは困難であり、今回の動画に関しても事前に検知するのは難しいとしている。

ニューヨーク・タイムズの取材を受けたグラフィカ社副社長は、この事件についてこう語った。

「われわれが目にしているのは、来るべき時代の前兆なのだ」

今後、Synthesia社のような動画生成サービスが増加し、もしかしたらマイクロソフト社がパワーポイントを動画まで作成できるようにするかもしれない。それらすべてが、ディープフェイクの大量生産装置となる。国際政治学者のイアン・ブレマーは、AI支援デジタル影響工作ツールを「大混乱生成兵器」と呼んだ。

しばらくは今回のような小規模で成果のあがらない実験レベルの利用が続くだろうが、その後は加速度的に成果が上がるようになり、利用件数も急増し、インフォカリプス(インフォメーション+アポカリプス=黙示録)の時代の到来となる。そうならないようにするための時間は限られている。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)など著作多数。X(旧ツイッター)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、インディアナ州にデータセンター建設 11

ビジネス

マイクロソフト出資の米ルーブリック、初値は公開価格

ビジネス

東京都区部CPI4月は1.6%上昇、高校授業料無償

ワールド

北朝鮮の金総書記、25日に多連装ロケット砲の試射視
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story