焦点:NZ、住宅価格低迷で険しい経済回復 前首相も国外移住
写真は売り物件の看板。2025年11月、ウェリントンのオリエンタルベイで撮影。REUTERS/Lucy Craymer
Stella Qiu
[ウェリントン 23日 ロイター] - 米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発した中東紛争は、ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)の金融政策にも影を落としている。中銀はこれまでに政策金利を5.5%から2.25%へ引き下げたものの、住宅価格はコロナ禍のピーク時から約2割も低迷したままで、中東紛争は問題をさらに複雑にしている。
コタリティNZの調査責任者ニック・グッドオール氏は、ニュージーランドで融資を受けている人たちは市場金利上昇と需要低迷に苦しんでおり、かつては世界で最も割高な市場の一つだった同国住宅市場の回復は「世界的な不確実性が高まる中で、今や疑問視されている」と指摘。同氏はかつて住宅価格、住宅ローン金利、給与が均衡点に達することで住宅市場が年内に多少回復すると予想していたものの、予想が外れたとし、「戦闘が長引けば長引くほど、状況は悪化するだろう」と話す。
<住宅市場に何が起きたのか>
中銀は、年内の住宅価格の上昇は見込めないとの見通しを既に示している。住宅ローン依存度の高いニュージーランドで、住宅ローンの指標となる2年物スワップ金利は世界的な金利上昇に追随し、今月に入ってから0.6パーセントポイント近く上昇した。
一方、先週発表された2025年第4・四半期の国内総生産(GDP)成長率は鈍化し、中東紛争前から建設業が低迷し、個人消費も弱含んでいたことを示した。失業率は5.4%と、約10年ぶりの高水準にある。
新型コロナ禍後の中銀の引き締めのスピードと規模は、金利と住宅市場の関係性が崩壊した一因となっている。不動産価格が暴落した一方、金利は急騰し、景気後退に陥った。
11月7日の議会総選挙では、経済に対する有権者の不満が主な争点となることは確実だ。ラクソン首相は、公共部門で昨年広がった解雇の余波から依然立ち直れていない労働市場を活性化させるための、具体的な施策をほとんど提示できていない。
<停滞する不動産開発>
不動産市場は供給が過剰な一方、買い手が減ったことで低迷しており、開発プロジェクトは停滞している。
主要都市オークランドでは、ニュージーランドで最も高いビルとなる予定だった56階建ての超高層マンション「シースケープ」を開発するシュンディ・カスタムズが今月に管財手続きに入ったため、完成しない可能性も出ている。
ウェリントンのマンション開発プロジェクト「ワン・タスマン」は2021年に着工し、25年早期の完成予定だった。しかし、ロイターが2月に取材した際には敷地内に残っている既存の建物は立ち入り禁止になっていたものの、解体前だった。
CBREの住宅調査ディレクター、タンバ・カールトン氏は「市場が最高潮に達していた21年に着手したため、どの開発業者にとっても物件を市場に投入するのは困難だった(中略)21年の直後には市場が急変したからだ」とし、「他にもごく一部のプロジェクトが同様の状況にあり、市場局面のタイミングがより好転するまでは一から計画を見直さざるを得なかった」と指摘する。
<前首相も豪州に移住>
ニュージーランドの住宅事情の悪化は、富裕層の国外流出が追い打ちを掛けた。ニュージーランド統計局によると、2025年だけで4万人の国民が国外へ流出し、うち6割超がオーストラリアへ移住した。
転出超過は2年連続となり、アーダーン前ニュージーランド首相がオーストラリア・シドニーへ最近移住したことが問題を象徴している。
退職者のブライアン・エリスさん(59)は「何千人ものウェリントン市民が地域を離れたため、需給のバランスが完全に変わってしまった」と言及。エリスさんは最近、持っていた都心部のマンションを予想より大幅に安い価格で売却しており「退職後の生活を満喫するために使える資金が、文字通り50万ドルも減ることになった」とこぼした。
一方、元プロジェクトマネージャーのデビッド・レインさんは、オーストラリアへの移住も検討したものの、妻がウェリントンで安定した職に就いているため断念したと話す。1年半前に職を失ってから求人に数百件応募したが、面接にたどり着いた機会はごくわずかだったという。
レインさんは「生活必需品以外のあらゆる予算を削った」とした上で、「経済的な観点から見れば、家計は間違いなく後退しているように感じる」と語った。
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