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マクロスコープ:FRB議長人事、「無難で安心感」と政府筋 問われる危機時の国際協調

2026年01月30日(金)16時34分

2017年5月26日、米首都ワシントンで撮影。REUTERS/Kevin Lamarque/File Photo

Kentaro ‍Sugiyama

[東京 30日 ロイター] - 複数の候補者が取り沙汰される中‌、米連邦準備理事会(FRB)議長に最終的に指名されるのが有力となったのがケビン・ウォーシュ元FRB理事だ。過去にも候補として取り上げられており、金融政策にも熟知しているだけに日本政府の関係者からは安堵の声が漏‌れた。同時に、中長期的な視点からは基軸​通貨国の中央銀行として従来通り、金融危機時に国際協調を主導できるのか、その対応にも関心が寄せられている。

「無難だね。市場からみても安心感のある人選ではないか」。ウォーシュ氏有力の一報を受け、ある経済官庁幹部はこう語った。FRBへの露骨な介入を続けるトランプ大統領が決める人事だけあって、政府内でも警戒感が高まっていたが、少なくとも市場の混乱は避けられるので‌はないか、と受け止められている。

<パウエル体制との「連続性」>

FRBは合議制で運営されており、議長が強い考えを持っていたとしても、その意向がそのまま金融政策に反映されるわけではない。連邦公開市場委員会(FOMC)では、理事や地区連銀総裁らが活発に議論し、最終判断が下される。議長には、市場との対話力に加え、組織内でコンセンサスを形成するための理論や説明力が求められる。

ウォーシュ氏に対する専門家の見方はどうか。FRBの動向に詳しいグローバルマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は、総じて「パウエル体制との不連続性は意識されないのではないか」と話す。

ウォーシュ氏は、義父のロナルド・ローダー氏がトランプ氏の初期の支持者で、自身も第1次トランプ政権でFRB議長の最有力候補と目されていた。2006年から11年までFRB​理事を務め、当時のバーナンキ議長からウォール街との有効なパイプ役と評価された経歴を⁠持つ。

鈴木氏は、ウォーシュ氏について、FRBの実務を熟知し、マーケット、政治、FOMCのいずれとも上手につきあえそう‍だと指摘。トランプ氏に選ばれた以上は1、2回程度の利下げに応じる可能性があるものの、その後は「トランプ氏が要求するほどの利下げはしないのではないか」という。オーソドックスな政策運営が行われるとみている。

<人事承認プロセス>

パウエル議長は5月に議長としての任期を終える。トランプ大統領が正式に発表すれば、まずは上院での承認を含む移行プロセスが円滑に進むかが焦点となる。前出の経済官庁幹部は「‍ウォーシュ氏であれば大きな異論は出にくい」との見方を示す。このシナリオ通り進めば、日本の金融・‍財政政策を‌予想するうえで不透明要因はひとつ解消されそうだ。

ただ仮に承認手続きが難航し、市場のボ‍ラティリティが高まれば、その影響は日本にも及びかねない。

例えば、金融政策の正常化を進めている日銀だ。30日昼時点の翌日物金利スワップ(OIS)市場では、日銀の次の利上げについて3月が16%、4月が49%、6月が30%の織り込みとなっており、年央までに9割超が追加利上げを見込む。

国際金融市場の不安定化で経済・物価の見通しの実現の確度が揺らげば、利上げの判断を慎重にせざるを得なくなる可能性がある。三井住友トラスト・アセッ⁠トマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「基本的に日本は日本の論理で政策判断をする」とした上で、「マーケットが大混乱するような局面では、利上げにブレーキをかける判断もあり得る」と読む。

<基⁠軸通貨国の中銀、責任果たせるか>

FRBが国際金融市場に与える影響‍が大きい点については、広く認識が共有されている。中長期的な論点として、ある日本政府関係者は「FRBが基軸通貨国の中銀として国際金融システムの安定に十分な役割を果たせるか」との問題意識を示す。

これまでFRBは金融危機時に流動性供給を通じて市場安​定に貢献してきたが、引き続きFRBが国際協調を重視する姿勢を示せるかどうかが試される。

主要中銀が連携して市場安定に動けば、日本の金融市場や金融システムの安定にも資する。ただ、自国第一主義を掲げるトランプ政権のもと、新興国や米州域外の危機に基軸通貨国の中銀としての役割がどこまで発揮されるかは、実際に危機を迎える局面まで見通しにくい。

(杉山健太郎 編集:橋本浩)

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