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国連次期事務総長選び、米が中南米けん制か

2025年10月27日(月)12時26分

10月24日、米政府は2026年末で任期を終えるグテレス国連事務総長の後任選びについて、世界の全地域の候補者が検討の対象になると表明した。ニューヨークの国連本部で2016年9月撮影(2025年 ロイター/Carlo Allegri)

Michelle Nichols

[国連 24日 ロイター] - 米政府は24日、2026年末で任期を終えるグテレス国連事務総長の後任選びについて、世界の全地域の候補者が検討の対象になると表明した。国連事務総長ポストは各地域による持ち回りが慣例で、次は中南米・カリブ海地域から選出される順番となっており、米政府の動きは中南米諸国の不満を招きそうだ。

グテレス氏の後任となる第10代事務総長は来年選出され、任期は27年1月1日から5年間。15カ国から成る安全保障理事会と国連総会議長が今年末までに連名で書簡を送って各国に推薦を行うよう要請し、正式な選考プロセスが始まる。

米国のシェイ国連次席大使は次期事務総長について「このように重要な職の選考過程は、できる限り幅広い候補者層から、完全に能力に基づいて行われるべきだと確信している。この観点から米国は全地域グループからの候補者を歓迎する」と述べた。

一方、現在安保理の非常任理事国であるパナマのリカルド・モスコソ国連次席大使は24日の安保理で、「われわれは次期事務総長の選考過程において、特に中南米・カリブ海地域の発展途上国の指導者としての経験と資質が正当に評価されるよう期待している」と述べた。

候補者は最終的に安保理常任理事国5カ国の合意を得ることが必要となる。

ロシアのネベンジャ国連大使はロイターに対し、事務総長職の地域持ち回りは「慣例であって、規則ではない」と指摘。「感情的には中南米諸国が今回は自分たちの番だと主張するのはもっともだ。しかし他の地域から候補者が出ることを妨げるものではなく、私の基準は能力だ」と述べた。また、「能力によって女性が選ばれるのなら全く問題ないが、能力が最優先だ。ジェンダーよりも能力が優先される」とも話した。

ただ、国連初の女性事務総長を求める声は高まっている。

安保理非常任理事国デンマークのクリスティーナ・マルクス・ラッセン国連大使は「創設から80年、そろそろ女性がトップに立つべきだ」と訴えた。

一方、シンクタンク「国際危機グループ」のリチャード・ゴーワン氏は、トランプ政権は「次期事務総長選出は国連の将来を形づくる大きなチャンスだと認識している」と指摘する。

これに対し、「多くの国連関係者は、能力本位の選考過程が必要だとの点で合意してはいるが、米国が求めるのが多国間主義を重んじる人物か、それとも国連の規模縮小をさらに進める人物かについては懸念を抱くだろう」と述べた。

その上でゴーワン氏は「しかし中南米諸国を軽視すべきではない。彼らは、今回は自分たちの番だと強く主張し、地域として団結して激しいロビー活動を展開するだろう」と予想した。

正式な選考はまだ始まっていないが、チリはすでに元大統領のミシェル・バチェレ氏を、コスタリカは元副大統領のレベッカ・グリンスパン氏をそれぞれ推薦する意向を示している。

ロイター
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