ニュース速報
ワールド

ゴールドマン、レアアースや重要鉱物の供給途絶リスク指摘

2025年10月21日(火)16時08分

 10月21日、ゴールドマン・サックスは20日付のリポートで、レアアース(希土類)、その他重要鉱物の世界的サプライチェーン(供給網)へのリスクが高まっていると指摘した。写真は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)のフロアで、スクリーンに映し出された同社のロゴ。米ニューヨーク州で5月撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)

Anmol Choubey

[21日 ロイター] - ゴールドマン・サックスは20日付のリポートで、レアアース(希土類)、その他重要鉱物の世界的サプライチェーン(供給網)へのリスクが高まっていると指摘した。採掘と精錬における中国の優位性を強調し、独立したサプライチェーンを構築する上での課題を挙げた。

<中国独壇場のサプライチェーン>

中国は10月9日、レアアースの輸出規制を強化した。

ゴールドマンは、中国は世界のレアアース採掘の69%、精錬の92%、磁石製造の98%を支配していると述べた。

レアアースは電池から半導体チップ、人工知能(AI)、防衛装備品など、用途が多岐にわたる。昨年の市場規模は60億ドルと、銅よりはるかに小さいが、レアアースに依存する産業で10%程度の調達難が起きれば、インフレ圧力となり、1500億ドルの経済損失につながると警告した。

<さらなる輸出規制リスク>

ゴールドマンは、サマリウム、黒鉛、ルテチウム、テルビウムが輸出規制に対し特に脆弱だと指摘した。サマリウムは高温耐性のあるサマリウム・コバルト磁石の原料。同磁石は航空宇宙機器に使用されている。

さらに、セリウムやランタンなどの軽希土類を、中国が精製と採掘で支配的な役割を担っていることから規制の対象になる可能性があると指摘した。ライナス・レアアースやソルベイといった西側企業が不足を緩和できるかもしれないが、中国への依存は依然大きいと述べた。

<独立サプライチェーンの課題>

各国は独立したレアアースと磁石のサプライチェーン構築を目指すが、地質学的な希少性、技術の複雑さ、環境問題など、さまざまな課題や障害があるとゴールドマンは指摘する。

重希土類は、中国とミャンマーが主たる産出地で、それ以外の既知の鉱床はほとんどが小規模で低品質。新規の開発には8─10年を要する。

また精製には高度な専門知識とインフラが必要で、インフラの建設は通常5年かかる。

磁石の生産は、米国、日本、ドイツで拡大しているものの、サマリウムなどの原料は中国が管理しており、制約に直面している。

<投資と商品リスク>

ゴールドマンは、投資家がレアアースの混乱リスクを管理する方法として株式を提案し、イルカ・リソーシズ、ライナス・レアアース、MPマテリアルズを挙げた。

磁石の製造に不可欠なネオジム・プラセオジム酸化物の供給不足を予測。1キログラム当たり85─90ドルの長期価格が、精製施設新設を正当化する最低ラインだとした。またレアアース以外で、コバルト、石油、天然ガスなどのコモディティーについて地政学的緊張による供給途絶リスクが高まっていると指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベトナムのガソリン二輪車規制、日本が見直し申し入れ

ワールド

インタビュー:高市新首相、人事で安倍内閣を参考か=

ワールド

情報BOX:高市早苗内閣の顔ぶれ

ワールド

官房長官に木原稔氏、財務相に片山氏=新内閣人事
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中