焦点:印パ空中戦、西側製か中国製か 武器の性能差に世界が注目

5月8日、 インドとパキスタンの対立が軍事衝突に発展する中で起きた両国の戦闘機による空中戦(ドッグファイト)は、世界中の軍事関係者の注目を集めることになるだろう。写真はインド空軍のラファール戦闘機。ベンガルールで2021年2月撮影(2025年 ロイター/Samuel Rajkumar)
Tim Hepher Mike Stone
[8日 ロイター] - インドとパキスタンの対立が軍事衝突に発展する中で起きた両国の戦闘機による空中戦(ドッグファイト)は、世界中の軍事関係者の注目を集めることになるだろう。
パキスタン空軍の戦闘機は中国製の「殲10」、インド空軍はフランス製の「ラファール」。米政府高官2人によると、パキスタン側が少なくともインドの戦闘機2機を撃墜した。中国の戦闘機の性能が大きく飛躍した可能性がある。
今回の空中戦は、各国の軍事関係者にとって自国の空軍が今後行うかもしれない戦闘に向けた知見を得るため、パイロットの能力や戦闘機、空対空ミサイルの性能を研究できる貴重な機会となっている。
複数の専門家は、この新鋭兵器の実戦使用例は世界中で分析対象になると説明。特に台湾やインド太平洋地域全般で対立の火種を抱える米国と中国にもそれが当てはまる。
米政府高官の1人はロイターに、パキスタンの殲10がインド軍機に向けて空対空ミサイルを発射したと確信していると語った。
ソーシャルメディアでは、中国製空対空ミサイル「PL-15」と欧州企業MDBAが製造するレーダー誘導型空対空ミサイル「ミーティア」の性能対決に注目する投稿が相次いでいる。
これらのミサイルが使われたという正式な発表はない。
英シンクタンク、国際問題戦略研究所(IISS)の航空軍事担当上席研究員を務めるダグラス・バリー氏は「中国、米国、多数の欧州諸国の航空兵器専門家らは、戦術や技術、戦闘過程、使われた装備、何が効果的で何が機能しなかったかについて空の戦闘現場からできるだけ多く正しいデータを得ようと並々ならぬ関心を示すだろう」と述べた。
「われわれには本当かどうか分からないが、中国製の最新鋭兵器が(パキスタン軍機に)搭載されているとすれば、西側の最新鋭兵器との真っ向勝負になるのは間違いない」という。
バリー氏は、フランスと米国はインド側からも同様の情報を入手することを期待すると予想する。
ある防衛業界幹部は「PL-15は大きな問題だ。米軍としては多大な注目を必要とする」と指摘した。
ラファールを製造するダッソー・アビエーションはコメントを控えた。ミーティアを開発したMBDAにもコメントを求めたが、返答がなかった。
<PL-15の脅威>
西側の軍事専門家や軍需産業の関係者によると、インド軍機にミーティアが搭載されていたのか、またパイロットが受けていた訓練の種類や時間はまだはっきりしていない。兵器の製造を手がけるメーカーは、技術性能と作戦行動上の要因を分けて考えようともするだろう。
キャピタル・アルファ・パートナーズのマネジングパートナーで米首都ワシントンを拠点に活動する軍事専門家のバイロン・カラン氏は、米国の兵器メーカーはウクライナにおける戦争で自社の武器がどのように稼働しているか定期的な評価報告を受けていると解説。「だからインドに兵器を提供する欧州メーカーも同様だと確実に想定されるし、パキスタンと中国の間でも恐らくそうした情報が共有されている。PL-15が宣伝通り、ないし期待以上だったとすれば中国はそうした話に耳を傾けたいだろう」と述べた。
自国の軍がミーティアを運用するある西側国家の軍需産業関係者の話によると、オンラインに投稿された画像に映るものは、目標を外して落下したミサイルの部品のようだという。中国空軍が運用するPL-15をパキスタンが保有しているのか、それとも2021年に公開された射程の短い輸出版を持っているのかについては情報が錯綜している。
バリー氏は、パキスタンが保有するPL-15の大半は輸出版だとの見方を示した。
別の西側の業界関係者は、通常のロケットエンジンを持つPL-15が、空気吸い込みロケット(タグテッドロケット)エンジンのミーティアよりも射程が長いという説を否定したが、PL-15が従来の想定より長射程の可能性があることは認めた。
PL-15の射程距離と性能は、西側にとって長年関心の高い問題になっている。その出現は、中国の軍事技術が旧ソ連製時代の派生的な水準から大きく発展したことを示す多くの証拠の1つと見なされているからだ。
米国は、PL-15に対抗する意味合いもあってロッキード・マーチンを通じて「AIM-260統合先進戦術ミサイル」の開発を進めている。
ミーティアも推進系や誘導系の性能改良が模索されているものの、複数の専門家によると今のところ進展は鈍いという。